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Google DeepMind、単一AIでヒューマノイド全身を制御する「Gemini Robotics 2」

(Deepmind.google)[写真拡大]
Google DeepMindは2026年7月31日、ヒューマノイドロボットの全身を単一のAIポリシーで制御する「Gemini Robotics 2」を発表した。従来のロボットAIが抱えてきた、移動と物体操作を別々の制御系で処理するというアーキテクチャ上の課題を解消し、より複雑な全身協調動作を可能にする。推論を担う「Gemini Robotics ER 2」は同日から一般開発者向けに公開され、API経由で利用できる。
■ロボットAIのボトルネックを解消する全身制御
Google DeepMindの従来のGemini Roboticsモデルは、ロボットアームに卓上のカップを持ち上げるよう指示できた。2026年7月31日にリリースされたGemini Robotics 2は、ヒューマノイド全体に対し、テーブルまで歩き、低い棚に向かってかがみ、そのカップを所定の容器へ正確に置くよう指示できる。これらはすべて、脚、胴体、両腕、そして22自由度の手を同時に協調させる、単一の学習済みポリシーによって実行される。これは単なる漸進的なアップデートではない。ヒューマノイドロボット向けAIを長く制約してきた、アーキテクチャ上のボトルネックを取り除くものだ。
この違いが重要なのは、2025年9月にリリースされたDeepMindの「Gemini Robotics 1.5」を含む従来のシステムが、移動(locomotion)と操作(manipulation)に別々のコントローラーを使用し、制御の受け渡し地点で両者をつなぎ合わせていたためだ。歩くロボットも、物をつかむロボットも、それぞれ技術的には優れている。しかし工場や倉庫が実際に必要としているものにより近いのは、手をどこへ置くべきかを判断し、荷重の変化に応じてバランスを保ちながら棚まで歩けるロボットである。Gemini Robotics 2は、この分離を単一のエンドツーエンド型の視覚・言語・行動(VLA)ポリシーへ統合した。これにより、サブシステム間の機械的な制御受け渡しを再設計することなく、全身の協調動作を必要とする新しい行動をモデルに学習させられる。
■3つのモデルからなる物理AIプラットフォーム
Google DeepMindは2026年7月31日、Gemini Robotics 2の名称の下で3つのモデルをリリースした。
「Gemini Robotics 2」は中核となるVLAモデルであり、カメラ画像と自然言語による指示を直接モーター制御命令へ変換するレイヤーだ。足から指先までヒューマノイド全体を制御できるDeepMind初のVLAであり、Apptronikの「Apollo 2」にSharpaWaveハンドを搭載した構成、Apollo 2にInspireハンドを搭載した構成、Robotiqグリッパーを備える双腕型の「Franka Duo」という3種類のハードウェア構成を、単一のモデルチェックポイントで制御する。
「Gemini Robotics ER 2」は身体性を備えた推論(embodied reasoning)を担うモデルである。自然言語による指示と連続映像を受け取り、数分に及ぶ複数ステップのタスクを計画し、進捗を監視したうえで、人間に助けを求めるタイミングを判断する高レベルの認知レイヤーだ。VLAが手足として機能するのに対し、ER 2は頭脳として機能する。Gemini Live APIの双方向ストリーミングエンドポイントを介して接続され、現在の動作を実行しながら、その先の手順を同時に推論できる。これにより、従来のロボットAIシステムを緩慢に見せていた「立ち止まって考える」ような中断をなくす。ER 2はGemini 3.5 Flashをベースとし、128Kトークンのコンテキストウィンドウを備える。
「Gemini Robotics On-Device 2」は、クラウドへ接続せず、ローカルハードウェアだけで動作するよう効率を最適化したVLAである。Gemini Robotics 1.5世代から、DeepMindが「モーション転送」と呼ぶ技術を継承している。形状、センサー、自由度が異なる新しいロボットの身体構成に、200件未満のデモンストレーション例を使って数時間で適応できるという。DeepMindは、学習データに含まれていなかったDexmate、SO101、Trossenの各プラットフォームで、このオンデバイスモデルが動作する様子を実演した。
■「全身制御」の意味とベンチマークが示す現在地
Gemini Robotics 2が取り組む工学上の課題は、研究分野では「移動操作(loco-manipulation)」と呼ばれている。ロボットが環境内を歩きながら物体を操作し、別々のコントローラーを順番に動かすのではなく、統合された全身制御システムによってバランス、移動、把持を協調させる能力を意味する。TechTimesは、IEEE Humanoids 2026カンファレンスに関連して、この課題を詳しく取り上げている。
従来のロボットAIアーキテクチャでは、脚を動かす移動コントローラーと、腕を制御する操作ポリシーが、主に別々のサブシステムとして動作していた。両者は制御を受け渡す必要があり、そのたびに、どちらのサブシステムが主導権を持つのかを決めなければならない脆弱な移行点が生じていた。この脆弱性は、工場や倉庫で想定される現実環境において問題となる。現実には、シミュレーションとは異なる摩擦、センサーノイズ、想定外の位置に置かれた物体が存在し、歩行経路と腕の軌道を同時に繰り返し計画し直す必要があるためだ。
2025年2月にリリースされたFigure AIの「Helix」は、腕、手、胴体、頭、指を含むヒューマノイドの上半身全体を高い頻度で制御した初のVLAであり、重要なマイルストーンとなった。Gemini Robotics 2はこの成果を全身へ拡張し、同じ学習済みポリシーの下に、協調的な下肢の移動制御を加えている。Apollo 2による、テーブルまで歩き、じょうろを持ち上げ、棚まで移動してかがみ、指定された容器へ正確に置くデモは、まさにこの能力を示すものだ。
このアーキテクチャの意味は、デモの内容だけにとどまらない。脚と腕が別々のサブシステムではなく、単一のエンドツーエンド型ポリシーによって制御されるため、全身の協調動作を必要とする新たな行動を、ハードウェア間の制御受け渡しロジックへ手を加えることなく、モデルの学習を通じて導入できる。移動と操作が統合されたロボットは、複数のコントローラーをつなぎ合わせたロボットとは質的に異なる形で、ソフトウェアによる機能更新が可能になる。
一方、システムがまだ実用段階に達していない領域について、DeepMindが率直なデータを示している点にも注目すべきだ。公開されたベンチマークによると、Inspireハンドを搭載したApollo 2では、テーブルから物体を持ち上げるタスクの成功率が68.4%、棚からでは76.3%、床からでは45.7%だった。初の全身制御モデルとしては評価できる数字である。しかし、多指ハンドによる器用な操作の結果は、より厳しい現状を示している。SharpaWaveハンドを用いたテストでは、電球を取り外すタスクが92%、ゴミ袋を結ぶタスクが44%、ジッパー付き保存袋を閉じるタスクが40%、電球を取り付けるタスクが36%、ちりとりを使うタスクが32%だった。最も成功率の高い微細操作タスクと最も低いタスクの間にある60パーセントポイントの差は、DeepMindの報告の欠点ではない。むしろ、ヒューマノイドが安定して実行できる作業と、依然として研究課題にとどまる作業との境界を示す、ベンチマーク全体で最も重要な数字である。
機械的に単純なグリッパーを使うFranka Duoのタスクでは、より良い結果が得られた。精密な挿入で89.6%、多様な工具をそろえるキッティング作業で78.9%、一般的なピックアンドプレースで74.2%の成功率を記録した。
■リアルタイムで推論する「ER 2」は開発者向けに公開
身体性を備えた推論モデルは、幅広い開発者コミュニティが最も早く利用できるレイヤーである。Gemini Robotics ER 2は2026年7月31日から、Gemini APIとGoogle AI Studioで提供され、Gemini Enterprise Agent Platformではプライベートプレビューとして利用できる。開発者は映像、音声、テキストをモデルへ直接ストリーミングし、VLAモデルやナビゲーションAPIを含む低レベルのロボット制御インターフェースを呼び出し可能なツールとして定義できる。モデルはそれらを利用し、複数ステップからなるタスクを自律的に統括する。
これはアクセス範囲の大きな変化だ。従来のGemini Roboticsモデルは、いずれも少数のTrusted Testerパートナーに提供が限定されていた。ER 2推論モデルは、Gemini APIキーを持つすべての開発者が利用できるようになった。
ER 2の技術的な進歩は、ロボット推論が抱えてきた2つの根本的な問題に取り組むものだ。1つ目は進捗追跡である。従来のロボットは、ある作業工程が完了し、次の工程へ進むべきタイミングを判断することが苦手だった。ER 2は、完了率を0~20%から80~100%までの5段階に分類する進捗分類タスクで57.4%の精度を記録した。また、カップが満杯になった瞬間や、ボルトが指定トルクに達した瞬間など、重要な出来事が発生した映像フレームを特定する「モーメント検出」では、91.3%の精度を達成している。
モーメント検出の平均絶対誤差は0.96秒だった。つまり、重要な出来事が発生した時点を平均して1秒未満の誤差で特定できる。これは、より大規模なモデル群より少ない計算コストで実現されており、安全性が求められる物理ロボティクスでは、人間が反応するよりも速い判断が必要になるため重要である。
2つ目の進歩は、複数ロボットの協調である。ER 2は、ヒューマノイドとロボットアームなど異なる種類のロボットが、共通の意味理解を通じて情報をやり取りし、一連の作業を分担できるようにする。DeepMindは、Apollo 2ヒューマノイドとFranka F3 Duoアームが並行して部屋を掃除する様子を実演した。この協調動作はあらかじめ固定的に記述されたものではなく、ER 2が各工程に適したロボットを判断し、サブタスクを動的に割り当てる。
ER 2はネイティブのツール呼び出しにも対応する。モデルはタスクの実行中にGoogle検索、製品在庫データベース、ユーザーが定義したAPIなどへ問い合わせられる。これによりロボットは、動作を停止することなく、タスクの完了に必要な情報を取得できる。
■オフライン環境向けモデルと新たな安全性ベンチマーク
Gemini Robotics On-Device 2は、クラウド接続を利用できない、またはクラウド接続が許容されない環境での導入を想定している。対象としては、屋外などで活動するフィールドロボティクス、厳格なデータ取り扱い要件がある医療環境、ネットワーク遅延に制約のある製造施設、映像を遠隔サーバーへ送信することでセキュリティ上のリスクや性能上の問題が生じる環境などが挙げられる。
200件未満のデモンストレーション例で新しいロボットの身体構成へ適応する「モーション転送」は、プラットフォームごとにモデルをゼロから学習させるためのデータ収集費用を負担できない、小規模なロボティクス企業や学術研究者にとって特に重要な機能となる可能性がある。Dexmate、SO101、Trossenでのデモでは、元の学習対象とは関節構成、センサー群、自由度が大きく異なるプラットフォームにも転用できることが示された。
モデルのリリースに合わせて、DeepMindはエージェント型ロボットAIの安全性を評価する新たなオープンベンチマーク「ASIMOV-Agentic」を公開した。このベンチマークでは、身体性を備えた推論レイヤーが、下位のVLAレイヤーから送られる危険な命令を拒否できるか、実行前にタスクが物理的に可能かどうかを評価できるか、不確実な場合に人間へ積極的に介入を求められるかを検証する。
ASIMOV-AgenticはHugging Faceで公開されている。DeepMindのモデルだけでなく、第三者が任意のロボットAIシステムの安全行動を評価するために利用できる標準テストセットとして、コミュニティーの共有リソースとなることを意図している。
名称は、2025年初頭にGemini Robotics 1.0とともに公開された、行動の意味に基づく安全性を評価するASIMOVベンチマークに由来する。
人間との接近に関する安全機能として、ER 2は人が所定の安全距離内に入ったことを検知し、適切な安全ツールを呼び出してロボットを制御された状態で停止させることができる。人がその区域を離れると、ロボットは自律的に動作を再開する。DeepMindはモデルと同時に、専用の「Gemini Robotics 2 Safety Technical Report」も公開した。
■ハードウェアパートナーと物理AIの今後
Gemini Robotics 2ファミリーは、実際のハードウェア上で動作している。公表されている導入パートナーには、ApptronikのApollo 2、FrankaのFranka Duo、Agile Robotsが含まれる。Boston Dynamicsも技術クレジットでパートナーとして記載されている。これは、Google DeepMindがGemini Roboticsモデルを統合する目的でAtlasロボット群の提供を受けるという、2026年5月に発表された既存の契約と整合する。
モデルへのアクセスは段階的に提供される。ER 2推論モデルは2026年7月31日から、Google AI StudioとGemini APIを通じてすべての開発者が利用できる。モデル文字列は「gemini-robotics-er-2-preview」である。VLAモデルとOn-Device 2モデルの利用には、Trusted Tester Programへ申請し、早期アクセスパートナーになる必要がある。
Gemini Robotics 2の発表は、ヒューマノイドロボティクス業界が10年にわたって目指してきた段階に到達しつつある時期に行われた。商用プラットフォームが出荷され、実際の生産作業が行われるようになった現在、主な制約は、ロボットが歩けるか、物をつかめるかという個別の能力ではなくなっている。移動と操作の両方を制御するAIが、現実環境で生じるさまざまな変化へ対応できるかどうかが問われている。
Gemini Robotics 2は、その問題を解決したとは主張していない。ベンチマークは、依然として残る隔たりを率直に示している。床から物体を持ち上げる全身操作の成功率は45.7%、ちりとりタスクは32%であり、微細操作タスク間には60パーセントポイントの差がある。いずれも、広い未解決領域が残されていることを表す。
今回のリリースが主張し、そのアーキテクチャが可能にしたのは、移動を担う知能と物体操作を担う知能の分離を、ソフトウェア層で解消したことだ。ハードウェアは変わらないが、制御ポリシーは統合されている。そのポリシーが実行できる行動は、学習データが増えるにつれて拡大する。テキサス州オースティンにあるApptronik Robot Parkでは、Apollo 2ロボットがGemini Robotics向けの実環境データを継続的に生成しており、それが学習データの供給元となる。
これが物理AIを拡張していくためのアーキテクチャである。単一のポリシー、データを生み出すハードウェアパートナーシップ、新たな能力を追加するモデル更新という循環だ。Gemini Robotics 2は、この循環を全身型ヒューマノイド上で実行できることを示した初の実証例である。
■注目ポイントQ&A
●Gemini Robotics 2とは何ですか?以前のバージョンとの違いは何ですか?
Gemini Robotics 2は、Google DeepMindが2026年7月31日にリリースした3つのAIモデルのファミリーです。移動と物体操作のシステムを別々につなぎ合わせるのではなく、単一の統合AIポリシーを通じて、脚、胴体、腕、多指ハンドを含むヒューマノイドロボット全体を制御します。Gemini Robotics 1.5を含む従来のDeepMindのロボットAIモデルは、卓上作業を行うロボットの上半身など、より限定された範囲を制御していました。新しいアーキテクチャでは、サブシステム間の制御受け渡しを再設計せず、モデルを学習させることで新しい全身動作を追加できます。
●開発者はGemini Robotics 2を利用できますか?
高レベルのタスク計画、進捗追跡、複数ロボットの協調を担う推論モデル「Gemini Robotics ER 2」は、モデル文字列「gemini-robotics-er-2-preview」を使用し、Gemini APIとGoogle AI Studioから利用できます。全身のモーター制御を担うVLAモデルとOn-Device 2モデルを利用するには、DeepMindのウェブサイトにある申請フォームからTrusted Tester Programへ参加する必要があります。2026年7月31日の発表時点では、ロボティクス専用アクセスプランの価格は公表されていません。
●現在のGemini Robotics 2にはどのような限界がありますか?
DeepMindが公開したベンチマークによると、性能はタスクの種類によって大きく異なります。Apollo 2ヒューマノイドによる全身操作の成功率は、床から物体を持ち上げるタスクの45.7%から、棚から持ち上げるタスクの76.3%までの範囲でした。22自由度のSharpaWaveハンドによる微細操作では、ちりとりタスクの32%から、電球を取り外すタスクの92%まで開きがあります。この60パーセントポイントの差は、安定して導入できる技術というより、依然として研究課題である領域が残っていることを率直に示しています。また、移動速度も商用利用の目安より遅い状態にあり、DeepMindは発表の中でこの点を認めています。
●On-Device 2は、なぜ新しいロボットへ短時間で適応できるのですか?
Gemini Robotics On-Device 2は、Gemini Robotics 1.5から継承した「モーション転送」と呼ばれる技術を使用しています。新しいハードウェアの形状、センサー、関節構成が元の学習対象と大きく異なる場合でも、200件未満のデモンストレーション例と数時間の適応作業で、新しいロボットの身体構成へ対応できるとされています。この機能は、元の学習データに含まれていなかったDexmate、SO101、Trossenの各プラットフォームで実証されています。
元記事: Gemini Robotics 2 Controls Full Humanoids: Legs, Torso, Arms, and Fingers Under One Policy
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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