ワシントンD.C.のロボタクシー法案、車椅子対応を規定せず WaymoとUberも対立

2026年7月21日 09:44

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記事提供元:Tech Times

ワシントンD.C.で、完全無人の自動運転タクシー(ロボタクシー)の商業運行を可能にする法案について、初の公聴会が開かれた。法案にはD.C.内での試験実績を求める要件があり、すでに基準を満たしたWaymoと、条件の見直しを求めるUberなどとの対立が表面化している。一方、車椅子対応車両の導入義務は盛り込まれておらず、障害者団体や労働組合からも厳しい批判が上がった。法案はまだ委員会段階にあり、実際に市民が利用できるのは早くても2028年春になると見込まれている。

■障害者対応の欠如:アプリ要求のみで車両義務はなし

ワシントンD.C.では先週、完全無人のロボタクシーを首都で運行可能にする法案について、初の公聴会が開かれた。約80人の証人が出席した長時間の審議を終える頃には、WaymoとUberは法案を巡って対立し、労働組合は廃案を要求していた。そして障害者支援団体からは、24ページに及ぶ法案に「車椅子」という言葉が一度も登場しないという、この日最も鋭い指摘が示された。

法案の251~253行にある唯一の障害者向け規定は、利用者がサービスを依頼できるアプリの提供を事業者に義務付けるものだ。電動車椅子の利用者もそのアプリをダウンロードできる。しかし、配車を依頼して到着する車両には、その車椅子を載せることができない。

この空白は、業界が急いで修正しようとしている単なる見落としではない。現在、世界のどの地域でも、完全無人かつ車椅子で利用できる配車サービスを提供している自動運転車企業は存在しない。Waymoの車椅子対応バンも人間の運転手が運転している。視覚障害者の支援団体が公聴会で「運転できない人々の移動の可能性を劇的に広げる」と述べた技術は実現しつつあるが、移動補助機器を利用する約2,600万人の米国人には、その恩恵が及ばない。

「2026年自動運転車配備認可改正法案」(法案26-0684)は、6区選出のチャールズ・アレン市議が、ブルック・ピント、マシュー・フルーミン両市議とともに5月1日に提出した。D.C.で商業用の完全無人車両を運行するための初の法的経路を設けるもので、交通・環境委員会は7月13日、ウィルソン・ビルディングで証言を聴取した。委員会はまだ採決の日程を決めていない。

■Waymoに有利な試験要件と高額な手数料

法案では、有料で乗客を運ぶ商業用自動運転車の許可を得ようとする企業に対し、D.C.内で最低25万マイル(約40万キロメートル)、かつ180日間の試験走行を求めている。

Waymoは2024年、安全担当者を同乗させてD.C.の道路のマッピングを開始し、翌年には商業運行への意向を表明した。同社はすでに走行距離と試験日数の両方の基準を上回っている。この先行優位は偶然ではなく、法案の構造によって生じるものだ。仮に現時点で法案が成立すれば、Waymoは競合他社が要件を満たす数カ月前にサービスを開始できる立場にある。

Teslaの上級政策顧問インディア・ハードマン氏をはじめとする業界関係者は、7月13日の公聴会でこの要件に直接異議を唱えた。フェニックス、サンフランシスコ、オースティンなど、D.C.以外の地域で蓄積した走行距離も基準に算入すべきだという主張だ。市議会がこの意見を受け入れれば競争条件は均衡に近づくが、受け入れなければ180日間という要件により、数週間ではなく数カ月単位の先行機会が生まれる。

法案が定める手数料にも、公聴会に出席したほぼすべての企業から異論が出た。申請手数料は100万ドル(約1億6,200万円)、許可手数料は500万ドル(約8億1,000万円)、更新手数料は100万ドル(約1億6,200万円)で、すべて1ドル=162円で換算した概算となる。さらに、自動運転車の全走行に1マイル当たり0.15ドル(約24円)の税金を課す。商業用車両は2028年1月1日まで200台が上限となり、どの事業者にとっても急速な事業拡大を実質的に制限する内容だ。

■提携企業でありながら対立するWaymoとUber

7月13日の公聴会で政治的に最も示唆的だったのは、ウィルソン・ビルディング外での労働組合による抗議や、ギグワーカーの食費に関する証言ではなかった。オースティンとアトランタで現在提携し、フェニックスでも6月29日まで3年間にわたりロボタクシー事業で協業していたWaymoとUberが、同じ委員会の前で互いに対立したことだった。

Waymoは法案26-0684をおおむね支持している。Waymoで米国東部の州・地方公共政策責任者を務めるマシュー・ウォルシュ氏は、法案を公共の安全を高めるための施策と位置付けた。同氏は市議らに対し、Waymoの技術が約50件の死亡事故となる可能性があったケースを含め、負傷者が出る事故を700件防ぐことに寄与したと説明した。現在の事業規模では、負傷者が出る事故を毎週約13件回避しているとも述べた。

ウォルシュ氏はまた、Waymoが5区と7区でサービスセンターや充電インフラを整備するため、数千万ドルを投じる方針を示した。市議会が規制を明確にすれば、D.C.で働く同社の人員を数十人から数百人へ増やすとしている。

Uberの立場はこれと正反対だ。同社の政策責任者ハビ・コレオソ氏は、現在の法案では完全自動運転車だけで構成する車両群をUberのプラットフォーム外で運行できるため、Waymoに事実上の独占を与えると主張した。

Uberは、ロボタクシーを配車ネットワーク上で人間の運転手と並行して運行させる「ハイブリッド」モデルの義務化を求めてロビー活動を行っている。実際には、自動運転車事業者にUberのアプリを使わせるか、人間の運転手によるサービスを並行して提供させることになる。配車市場の需要側を押さえるUberにとって、この提案の論理は明快だ。現在の法案は、WaymoがUberを完全に迂回することを認める内容だからである。

「利用者が人間の運転するUberを選べるようにする要件が必要だ」とコレオソ氏は述べ、Uberの立場を消費者の選択肢を守るためのものと説明した。独自アプリを運営し、競合企業のプラットフォームに戻ることを強制する法案を望まないWaymoは、この主張に納得していない。Lyftも公聴会に出席し、完全無人車を優先する市場で事業を失うことへの懸念を表明した。

■緊急現場への対応を「機能上の不十分さ」とした連邦当局

7月13日の公聴会は、規制上の懸念がない状態で開かれたわけではない。その5日前の7月8日、米運輸省の常設一般命令の対象となるすべての自動運転車開発企業に対し、米国道路交通安全局(NHTSA)のジョナサン・モリソン局長が正式な書簡を送付していた。

NHTSAは、完全無人車両が活動中の緊急現場に進入したり、救急車や消防隊の活動を妨げたり、点滅灯、発炎筒、煙、火災、交通コーンを認識できなかったりする事案が繰り返されていることを確認していた。

モリソン局長は「明確にしておきたい。このような状況を検知し、適切に対応できないことは、機能上の不十分さを示している」と記し、「緊急現場は、まれにしか起こらない極端な『エッジケース』ではない」と指摘した。NHTSAは自動運転車の開発企業に7月末までの解決策提示を求め、その期限までに各社との直接協議を設定すると発表した。

モリソン局長が挙げた技術的問題は具体的だ。自動運転車の認識システムは、LIDAR、カメラ、レーダーの情報を組み合わせて物体を分類し、適切な車両動作を判断する「センサーフュージョン」に基づいている。煙はLIDARの反射データを劣化させ、カメラの視界を遮る。激しく点滅する光はセンサーにノイズを生じさせる。緊急現場の交通コーンはまばらで、配置方法も一定していない。個別でも認識システムに負荷をかける条件が重なることで、通常の交通環境向けに最適化されたシステムの処理能力を超えることがある。

この問題を具体的に示したのが、6月20日にラスベガスで起きたZooxの事案だ。乗客を乗せていなかったロボタクシーが、まだコーンで規制されていない火災現場の濃い煙の中へ進入した。車両は方向転換を試みながら急ブレーキをかけ、現場の中央で停止した。その後、遠隔操作担当者が車両の制御を引き継ぎ、後退させた。

Zooxはモリソン局長の書簡と同じ7月8日、保有する105台すべてを対象に自主リコールを届け出た。7月17日に公開されたリコール対応ソフトウェアには、濃い煙を検知して対応する機能が追加されている。

Waymoもこの問題と無縁ではない。2026年3月に公開されたTechCrunchの調査では、同月までだけで、緊急対応要員が活動中の現場からWaymo車両を物理的に移動させなければならなかった事案が少なくとも6件確認された。銃乱射事件に対応していた警察官の進路をWaymo車両が塞いだ事例や、集合住宅の爆発現場を塞いでいた車両をダラス郡の警察官が自ら移動させた事例も含まれている。

アレン市議は7月13日の公聴会で、Waymo車両の常時稼働するカメラ群が、日常生活を送る歩行者を追跡するのかという関連上の懸念についても同社を追及した。この質問に対する明確な回答は得られなかった。

■車椅子利用者に用意されたのはアプリ要件のみ

法案の障害者向け規定が事業者に求めるのは、乗客がサービスを依頼できるアプリを提供することだけである。それが規定のすべてだ。

「障害者に変革をもたらすはずだった技術が、その恩恵を受けられないことを保証する法律の下で実現しようとしている」。マイケル・カーン氏は7月17日にThe Weekly Driverで公開した分析でこう記し、Planetizenもその2日後に同記事を引用した。

カーン氏が指摘したように、法案は車椅子対応車両を義務付けていない。世界のどこにも、完全無人で車椅子に対応したサービスを運営する自動運転車企業はない。Waymoはサンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックスで車椅子対応バンを運行しているが、これらの車両は人間の運転手が運転している。

Teslaのインディア・ハードマン氏は公聴会で、同社が「専用設計の車椅子対応自動運転車」をテキサスで開発していることを明らかにした。ただし、導入時期は示さなかった。

視覚障害者の支援団体は、完全自動運転車が運転できない人々の移動の可能性を劇的に広げるとして、この技術を支持する証言を行った。その可能性は、特定の障害を持つ人々にとっては現実的なものだ。しかし、車椅子から座席へ移乗できない利用者にとって、法案が生み出すのは二層構造の無人移動サービスである。歩行可能な利用者には完全無人サービスへのアクセスが提供される一方、それ以外の利用者は引き続き排除される。法案は、事業者に対してサービス開始前にこの問題へ対応することを求めていない。

■労働組合が示したサンフランシスコの実績

公聴会の開始前、ウィルソン・ビルディングの外では、全米トラック運転手組合ローカル639、SEIUローカル32BJ、ATUローカル689による労働組合連合が集会を開いた。UberとLyftが集めた配車サービスの運転手も参加した。

全米トラック運転手組合ローカル639のビル・デービス委員長は、「法案でいう『安全策』は労働者を守るものではなく、この法案はシリコンバレーの億万長者以外の誰にも利益をもたらさないため、市議会に法案26-0684を否決するよう求めている」と述べた。

懸念は仮定に基づくものではない。労働組合は、Waymoが商業運行の開始から20カ月以内に配車市場の約30%を獲得したサンフランシスコのデータを挙げた。D.C.地域で働く黒人や褐色人種のビル清掃員、警備員、空港労働者など2万人以上を代表するSEIUローカル32BJによると、組合員の40%超が、収入を補うためUberやLyftに頼るパートタイム労働者である。

警備員として働きながらUberとLyftの運転手もしているクリスタル・ミドルトン氏は、自身の状況を率直に説明した。「私は毎日9時間勤務し、仕事が終わった後も5~6時間運転しています」と述べ、その収入が食料品代や携帯電話料金の支払いに必要だと訴えた。

法案は、自動運転車の走行に1マイル当たり0.15ドルを課税し、その税収を地下鉄などの公共交通への投資と労働者の職業移行基金に充てることで、この問題に対応しようとしている。ただし、この基金で十分なのか、またどのように運営するのかは、公聴会では結論が出なかった。

■サンフランシスコで30台以上が立ち往生

D.C.以外でも、ロボタクシー業界は大規模運用で起こり得る問題を示す新たな事例を抱えた状態で、7月13日の公聴会を迎えた。

2026年7月4日、ゴールデンゲートブリッジから打ち上げられた花火を見ようと推定10万人が集まった後、サンフランシスコのプレシディオ地区で30台を超えるWaymo車両が立ち往生した。Waymo車両は数時間にわたって道路に列を作り、一部はバッテリーが切れるまで停止したため、レッカー移動が必要になった。

乗客を乗せた1台は、火が付いた状態の花火の上を走行した。車両に損傷はなく、けが人も報告されていない。Waymoは乗客に連絡したとしている。サンフランシスコ市郡政執行委員のビラル・マフムード氏は7月14日、自動運転車企業が交通渋滞と緊急対応に及ぼした影響について市当局に説明を求め、正式な調査を開始した。

自動運転車技術を以前から支持していたダニエル・ルーリー市長も7月17日、カリフォルニア州運輸長官のトックス・オミシャキン氏に正式な書簡を送った。自動運転車企業に対し、走行不能になった車両が車線を塞ぐことを防ぐ能力、緊急時にルートとサービス区域をリアルタイムで変更する能力、市当局とリアルタイムの運行データを共有する能力、大規模な公共行事に対応できることを試験で証明する能力の4点を示すよう、州が義務付けることを求めた。

ルーリー市長は書簡で、7月4日の混乱時にWaymo車両の「公共安全機関向け手動オーバーライドが、設計通りに機能しなかったとの報告があった」とも述べている。

この事案は、独立記念日のナショナル・モールでの祝賀行事、大統領就任式、国葬など、同程度の大規模行事が開かれるD.C.にも直接関係する。こうした場でロボタクシーに障害が生じれば、全米の注目を集め、安全上の問題を引き起こす可能性がある。

■2028年に向けた長い道のり

7月13日の公聴会は始まりにすぎず、結論ではない。交通・環境委員会は、法案を次の段階に進めるかどうかを決める前に証言を精査する必要がある。アレン市議は慎重に審議を進める意向を示しており、D.C.内での試験要件や手数料体系など、法案の複数の規定に対して業界から継続的な反対が出ている。

日程も重要だ。アレン市議の推定によると、法案が現在の内容または修正された形で成立したとしても、D.C.で完全無人ロボタクシーを呼べるようになるのは早くても2028年春である。200台の車両上限が解除されるのは2028年1月1日で、その後にD.C.運輸局が許可を発行する必要があるため、商業運行はさらに先になる。

アレン市議は公聴会で、「実際に2028年1月1日より前に実現できる事業者がいるとは、到底考えにくい」と述べた。

この法案が通常以上の政策的な重みを持つのは、審議されている場所に理由がある。ワシントンD.C.は米国の主要都市であると同時に、自動運転車の全米規制の枠組みを策定している連邦政府の所在地でもある。自動運転車企業が緊急現場への対応策を示すNHTSAの期限は7月31日に到来する。

トランプ政権の運輸省はこれとは別に、完全自動運転車に対するブレーキペダル搭載要件の撤廃を提案し、ハンドルやペダルを持たない車両を導入しやすくするため、連邦自動車安全基準の改定を進めている。

D.C.で最終的に成立する条例は、どのような形になっても、サクラメントからオースティン、コロンバスまで全米の関係者から注目されることになる。Waymoは首都環状道路内のすべての街区を何年もかけてマッピングし、D.C.で自社の主張を推進するため4社のロビー会社を起用してきた。同社にとって、法案成立に向けた時間的な余裕は小さい。一方、成立する法案の下でもサービスを受けられない車椅子利用者を含む、それ以外の人々にとって、その制度の枠組みはすでに形作られつつある。

■注目ポイントQ&A

●法案が可決された場合、車椅子ユーザーはD.C.のロボタクシーを利用できますか?

車椅子から車両の座席へ移乗できない場合は利用できません。法案の251~253行にある唯一の障害者向け規定は、事業者に利用しやすいアプリの提供を義務付けていますが、車両自体を車椅子対応にすることは求めていません。現在、完全無人で車椅子に対応したサービスを運営する自動運転車企業は世界のどこにもありません。Waymoは複数の都市で車椅子対応バンを運行していますが、人間の運転手が運転しています。現在の法案は、歩行可能な利用者には完全無人サービスを提供する一方、移乗できない移動補助機器の利用者を引き続き対象外とする二層構造を生むことになります。

●NHTSAが指摘した「機能上の不十分さ」とは何ですか?

NHTSAのジョナサン・モリソン局長は2026年7月8日、自動運転車が点滅灯、発炎筒、煙、火災、交通コーンなどを認識できず、緊急現場を安全に検知して対応できないことは、まれなエッジケースではなく「機能上の不十分さ」だと正式に指摘しました。NHTSAは、すべての自動運転車開発企業に7月末までの解決策提示を求めています。D.C.の法案は許可申請者に「緊急対応要員との連携計画」の提出を求めていますが、NHTSAの指摘は、根本にある認識システムの問題が業界のどの企業によっても技術的に解決されていないことを示しています。

●D.C.で実際にロボタクシーに乗れるようになるのはいつ頃ですか?

アレン市議の推定では、現実的に最も早い時期は2028年春です。法案はまだ委員会を通過していません。成立した場合も、商業用車両を200台に制限する上限が解除されるのは2028年1月1日で、その後にD.C.運輸局が許可を発行する必要があります。法案が企業側の受け入れられる形で成立した場合でも、一般市民に影響する規模の商業サービスは、早くても2028年より前には始まらないとみられます。

●他都市で提携しているWaymoとUberが、なぜD.C.では対立しているのですか?

D.C.での対立は、WaymoとUberの関係に内在する構造的な緊張を反映しています。オースティンとアトランタでは、WaymoのロボタクシーがUberのアプリに表示され、Uberが顧客との接点を握っています。一方、D.C.ではWaymoが独自のアプリを使って運行し、Uberを介さずにサービスを提供しようとしています。現在の法案はこれを認める内容です。

Uberは、ロボタクシー事業者に既存の配車プラットフォームとの統合を求める「ハイブリッド」モデルを働きかけており、需要側における自社の地位を維持しようとしています。WaymoとUberは、両社が契約上の終了日だったと説明する2026年6月29日にフェニックスでの提携を終了しましたが、D.C.の公聴会では、Waymoの事業拡大に伴って両社の利害が分かれつつある理由が浮き彫りになりました。

元記事: DC Robotaxi Bill Omits Wheelchair Access While Waymo and Uber Clash Over Rules

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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