関連記事
Z.aiが「GLM-5.2」のオープンウェイトを公開、性能はClaude Opusに迫るもAPI経由のデータ送信に中国法上のリスク指摘

北京を拠点とするAI企業Z.ai(旧Zhipu AI)は、最新モデル「GLM-5.2」のオープンウェイトをMITライセンスで一般公開した。写真は同社のブラウザ版チャットアプリ[写真拡大]
北京を拠点とするAI企業Z.ai(旧Zhipu AI)は、最新モデル「GLM-5.2」のオープンウェイトをMITライセンスで一般公開した。オープンライセンスのコーディングモデルの中では最高峰の性能とされているが、API経由で利用する場合は中国の国家情報法などの適用を受けるためデータ流出リスクが指摘されており、自社ホスティングには約1.5テラバイトものGPUメモリが必要となるなど、導入にあたってはインフラ面とセキュリティ面での慎重な検討が求められている。
北京を拠点とし、かつてZhipu AIの名で知られていたAI企業Z.aiは、現地時間2026年6月17日午前8時52分(日本時間同日午後9時52分)、最新モデル「GLM-5.2」の完全なMITライセンスウェイトをHugging FaceとModelScope上で一般公開した。これは、同社が6月13日にコーディングプランのサブスクリプション向けに開始したリリースプロセスの完了を意味する。
今回のウェイト公開に合わせ、同社初となる公式ベンチマークの比較表も公表された。この数値は6月13日のローンチ時点では一切開示されていなかったものである。Z.aiの公表値によると、7530億パラメータの混合エキスパート(MoE)モデルであるGLM-5.2は、「Code Arena」において世界第2位に位置し、3つの独立した長期コーディング評価において「Claude Opus 4.8」にわずか1ポイント差まで迫っているという。
米商務省による2026年6月12日の輸出管理指令を受け、Anthropic社の「Claude Fable 5」および「Mythos 5」へのアクセスを絶たれた米国域外の開発者にとって、GLM-5.2は現在利用可能なオープンライセンスのコーディングモデルの中で最も高い能力を持つとされる。しかし、同モデルの導入はMITライセンスが示すほど単純な判断ではない。
独自のインフラ上でウェイトを自社ホスティングするのではなく、Z.aiクラウドAPIを利用する場合、送信されるデータは中国の国家情報法の適用下にある企業を経由することになる。同法第7条は、すべての中国組織に対し「国家のインテリジェンス活動を支援、援助、および協力する」ことを義務づけている。米国土安全保障省(DHS)は、この法枠組みによって中国企業が米国人や米国企業のデータ提供を強制される可能性があると警告している。
ウェイトを自社ホスティングすれば、API経由でのデータ流出リスクは解消される。しかし、フル精度でモデルを稼働させるには約1.5テラバイト(TB)ものGPUメモリが必要であり、このインフラ要件はほとんどの開発チームにとって手の届かない水準である。
■第三者ベンチマークが示す、オープンソースコーディング分野におけるGLM-5.2の優位性
Z.aiが本日公開したベンチマークは、6月13日のサブスクリプションローンチ時ではなく、オープンウェイトの公開と同時にリリースされた。これはフラグシップモデルの公開手順としては異例の対応である。このベンチマークによると、GLM-5.2は現在利用可能なオープンソースのコーディングモデルの中で最強とされているが、商用のクローズドソースの最先端モデルとの間には、縮まりつつも依然として明確な差が存在している。
端末上の自動コーディングに特化したベンチマーク「Terminal-Bench 2.1」において、GLM-5.2は81.0を記録し、Claude Opus 4.8の85.0に4ポイント差まで迫った。現実のソフトウェアエンジニアリング課題の解決力を測る「SWE-bench Pro」では、GLM-5.2は62.1を記録し、GPT-5.5の58.6や前世代モデルであるGLM-5.1の58.4を上回った。
Z.aiの公式文書によると、前世代機との差異を最も明確に示すとされる3つの長期自律型コーディングベンチマーク(FrontierSWE、PostTrainBench、SWE-Marathon)において、GLM-5.2はタスクに応じてClaude Opus 4.8に約1〜13ポイント及ばなかったものの、GPT-5.5を一貫して上回り、これら3つの評価すべてにおいてオープンソースモデルの首位を維持したという。
第三者による独立した評価もこれを裏付けている。開発元が報告する合格率よりも操作が格段に難しいとされる、ブラインド対面方式の人手投票によるイロレーティング評価方式のリーダーボード「Code Arena」(Arena.ai運営)において、GLM-5.2は1595のスコアで総合2位となった。輸出管理令に伴いClaude Fable 5が評価対象から除外されたため、現在実際に利用可能なモデルとしては第1位となる。
Z.aiは、Webデザイン出力の審美性を評価する「Design Arena」でも首位を獲得したと主張している。これらの独立系ランキングは、開発元が選定した評価環境での基準値をクリアするだけでなく、直接比較で他モデルを安定して上回る必要があるイロレーティングを採用しているため、開発元発表の合格率よりも信頼性が高いと見なされている。
一方で、最先端モデルとの差は依然として存在する。SWE-bench Proにおいて、GLM-5.2の62.1というスコアは、Claude Opus 4.8の69.2に7ポイント及ばない。また、AIME(アメリカ招待数学受験)などの高度な推論を要する評価において、GLM-5.2は一定の競争力を維持しているものの、トップには立っていない。同モデルの優位性は、そのアーキテクチャが最適化されている「長いコンテキスト」および「長期的な自律型コーディングタスク」に集中している。
■7530億パラメータモデルを100万トークンのコンテキスト窓に収める技術
GLM-5.2の背景にあるエンジニアリング上の課題は、説明は容易だが解決は困難なものである。通常のトランスフォーマーモデルが生成時に過去のトークンを参照するための「Key-Value(KV)キャッシュ」のメモリ所要量は、コンテキストの長さに比例して線形に増加する。100万トークンの入力と7530億パラメータという規模では、単純な実装では推論実行に必要なメモリが膨大になり、実用的なデプロイが不可能になってしまう。
Z.aiは、モデルアーキテクチャと推論インフラの双方を共同設計することでこの問題に対処した。モデルレベルでは、疎なアテンションレイヤー4層ごとに同じアテンションインデックス計算を再利用する技術「IndexShare」を採用。これにより、各レイヤーでの再計算を回避し、100万トークンの完全なコンテキスト長においてトークンあたりの浮動小数点演算(FLOPs)を2.9倍削減した。
さらに、マルチトークン予測レイヤーの改良により、インデックス計算を最初のデコードステップで1度だけ実行し、以降のステップでその結果を再利用することが可能となった。Z.aiの発表によれば、この技術によって投機的デコーディングの受け入れ長が最大20%向上したという。
インフラレベルでは、KVキャッシュをGPU間で分散処理する技術「LayerSplit」を採用。各GPUカードがキャッシュ全体ではなくトランスフォーマーレイヤーの一部のみを保持するようにし、GPUあたりのメモリ負荷を大幅に軽減した。また、ブロードキャストとオーバーラップの仕組みによって、この再分配をアクティブな計算と並行して行うため、追加される遅延は無視できるレベルに抑えられているという。
このLayerSplitを補完するのが「HiSparse」システムである。これは、非アクティブなコンテキスト領域のキャッシュエントリをホストメモリ(メインメモリ)に能動的に退避させつつ、最近アクセスされた領域については帯域幅の広いGPUメモリ内に保持する仕組みである。
また、GLM-5.2は混合エキスパート(MoE)モデルを採用しており、総パラメータ数が7530億であるにもかかわらず、実用的なデプロイを可能にしている。任意の入力に対して実際にアクティブになるのは、そのうち約400億パラメータのみである。学習済みのゲーティングネットワークが、入力された各トークンを数百個のエキスパート(専門化されたサブネットワーク)の中から最も関連性の高い2つにルーティングする。
これにより、すべてのパラメータにプロンプトを処理させることなく、巨大なモデル容量を維持することに成功した。Z.aiの技術文書によると、これらを組み合わせたスループットの結果として、3万2000トークンから100万トークンのコンテキスト長において、GLM-5.1と比較して3%から192%の向上が見られ、最もコンテキストが長い場合に最大の性能向上が得られたという。
Z.aiはさらに、同モデルの推論インフラが、米国によるNVIDIA製GPUの対中輸出制限を念頭に、華為技術(ファーウェイ)の「Ascend」チップを含む中国国内のアクセラレータプラットフォームや、Cambricon、Moore Threads、その他複数の中国国内メーカーのチップ上で動作することを確認した。
■「オープンソース」が自社データにとって何を意味するのか
GLM-5.2のMITライセンスは、開発者に対し、Z.aiへの通知なしでモデルのウェイトをダウンロード、改変、微調整(ファインチューニング)、および商業展開する権利を制限なく付与している。これは真に有意義な許諾であり、自社サーバーにインストールされたウェイトは米国や中国の政府指令によって停止されることがないため、前週のFable 5輸出禁止で浮き彫りになった「アクセス権剥奪」のリスクに対する直接的な解決策となる。
しかし、このライセンスは、構造の異なるもう一つのリスクを解決するものではない。Z.aiは北京に拠点を置き、中国法に基づいて登録・運営されている企業である。2017年に制定された中国の国家情報法第7条は、すべての中国の組織および国民に対し、「法に基づき国家のインテリジェンス活動を支持、援助、および協力する」ことを義務づけている。
また、2021年制定のデータセキュリティ法は中国企業に政府からのデータ要求への協力を義務づけており、2017年制定のサイバーセキュリティ法にはデータの国内保存要件や、公安・情報機関への技術的協力の義務化が含まれている。米国土安全保障省(DHS)は「データセキュリティビジネス勧告」において、これらの法律により、中国企業が米国人や米国企業のデータへのアクセス提供を強制され、かつその協力の事実を秘匿される可能性があると指摘している。
これらの法的義務は、GLM-5.2のAPIや「GLMコーディングプラン」のサブスクリプションを含め、データがZ.aiのクラウドインフラを通過する際には常に適用される。開発者がコーディング業務でZ.aiのAPIエンドポイントを使用する場合、送信されるコードやプロンプトはZ.aiが管理するサーバーを経由する。そのデータは、開発者の所在地、Z.aiが掲げるプライバシーポリシー、さらにはモデルのウェイト自体に付与されたMITライセンスの内容に関わらず、中国法の管轄下に置かれることになる。
この情報露出を回避する唯一の手段が、自社ホスティングである。ダウンロードしたウェイトを自身が所有または管理するインフラで実行すれば、データがZ.aiに送信されることはない。しかし、GLM-5.2をフル精度で自社ホスティングするには、約1488ギガバイト(約1.5テラバイト)のGPUメモリが必要となる。推奨されるデプロイ構成は、8台のNVIDIA H200 GPUをテンソル並列で稼働させるセットアップである。
大半の開発チームや多くの中堅企業には、このようなインフラを備える余裕はない。しかし、これを導入可能な企業にとっては、今回のウェイト公開により、最先端クラスのコーディングモデルを完全なデータ主権のもとでデプロイすることが初めて可能となった。インフラを持たない企業にとって、実質的な選択肢はZ.aiのAPIの利用となるが、その際には上記の法的背景を十分に考慮に入れる必要がある。
■米エンティティ・リストに掲載されたZhipu AI:開発者が知っておくべき事実
「オープンソース」という枠組みによっても変わらない事実がある。米産業安全保障局(BIS)は2025年1月、Zhipu AI(現Z.ai)が「高度な人工知能研究の開発と統合を通じ、中華人民共和国の軍事近代化を推進した」役割を理由に、同社を輸出管理対象である「エンティティ・リスト(禁輸リスト)」に追加した。このリストへの掲載は、米国企業や個人が同社に対し、米国の輸出規制対象品目を提供する際に輸出許可を必要とすることを意味する。
OpenAIが2025年6月に発表した分析によると、同社の指導部は李強首相を含む中国共産党高官と定期的に接触しており、同社への政府支援の投資額は14億ドル(1ドル=160円換算で約2240億円)を超えると推定されている。また、2025年5月には、中国の公安部傘下の国家サイバーセキュリティ報告センターが、同社の消費者向けアプリについて、ユーザーが許諾した範囲を超えてデータを収集しているとして警告を発した。
この事案は、同社のデータ取り扱いが単なる法的な可能性にとどまらず、記録された具体的な懸念行動として表面化した事例である。
さらに2026年5月、米下院議員らは重要インフラにおける中国製AIモデルがもたらすサイバーセキュリティリスクについて正式な調査を開始し、調査対象企業としてDeepSeek、MiniMax、ByteDanceと並び、Zhipu AIの名を挙げた。
これらの事実があるからといって、GLM-5.2が機密データを取り扱わない用途や、Z.aiのクラウドインフラを経由しない環境での利用に適さないということではない。しかし、同モデルの採用を検討している開発者や企業は、本番環境のワークロードをZ.aiのAPI経由で処理する前に、こうした背景を含む全体の状況を慎重に比較検討すべきであることを示している。
■地政学的戦略としてのオープンソース
Z.aiは、GLM-5.2のオープンソース公開について、AIアクセスに対する地政学的な制限への意図的な対抗措置であることを明言している。その公開時期がメッセージをさらに強めている。同社は、米商務省がAnthropic社に対し、すべての外国籍保有者への「Fable 5」および「Mythos 5」の提供停止を命じた翌日の6月13日にGLM-5.2を発表した。
この規制は、対象者のみを厳密に制限することが困難であったため、Anthropic社はリアルタイムでの国籍確認を行う代わりに、全世界のすべての顧客に対して両モデルの提供を停止するという措置をとるに至った。
Z.aiが主張する戦略的論理は、一度ダウンロードされたMITライセンスのモデルウェイトは、いかなる政府の指令によっても停止させることができないという点にある。この主張は理にかなっている。しかし、Fable 5の輸出禁止を生み出した地政学的対立が、中国政府に対するZhipu AIの協力義務を定める法枠組みをも生み出しているという事実は変わらない。
アクセス権の剥奪とデータアクセスの懸念という、形態こそ異なるものの、双方が現実のリスクであり、プラットフォームを選択する前にそれぞれを理解しておく価値がある。
最先端であるAnthropic社の2つのモデルの利用制限を受けた米国域外の世界中の開発者コミュニティにとって、GLM-5.2は現在入手可能なオープンソースの代替選択肢として、最高水準のベンチマーク性能を示す存在である。同モデルの実用性については疑う余地がない。「Code Arena」での順位や長期ベンチマークの結果は、同モデルが最先端に近い性能を持ち、多くのコーディング用途で十分に実用的であることを示している。
焦点は、チームや組織、取り扱うワークロードの許容リスクにどのデプロイ方法が適合するかである。すなわち、前述の法的な背景を考慮しつつAPIを利用するか、あるいは必要となるインフラを全て揃えて自社サーバーでホスティングするか、という選択である。
■注目ポイントQ&A
●GLM-5.2は安全に使用できますか?
回答はどのように使用するかによって異なります。ご自身で所有・管理するインフラにダウンロードしたウェイトを自社ホスティングする方法が、データ流出のリスクを最も低く抑えられます。この方法であれば、コードやプロンプトがZ.aiのサーバーに送信されることはありません。
一方、Z.aiのクラウドAPI(GLMコーディングプランのサブスクリプションを含む)を利用する場合、データは中国の国家情報法の適用を受けるインフラを経由します。この法律は、中国の組織に対して政府のインテリジェンス活動への協力を義務づけており、米国土安全保障省(DHS)は中国企業がデータへのアクセス提供を強制される可能性があると警告しています。
そのため、機密性の低い用途であればAPIの利用は現実的な選択肢となりますが、機密性の高いシステムや顧客データ、セキュリティに関わるコードを扱う場合は、インフラを用意して自社ホスティングを行うか、あるいは別のモデルの採用を検討するのが適切です。
●コーディングタスクにおいて、GLM-5.2はClaude Opusと比べてどうですか?
Z.aiの公式文書および第三者評価で確認されたベンチマークによると、GLM-5.2はオープンソースで最も強力なコーディングモデルですが、Claude Opus 4.8との直接比較では、依然として多くのケースで下回っています。たとえば、「Terminal-Bench 2.1」ではGLM-5.2が81.0に対し、Opus 4.8は85.0となっており、「SWE-bench Pro」でもGLM-5.2の62.1に対し、Opus 4.8は69.2を記録しています。
ただし、長期間にわたる自律型タスクでは差が縮まります。「FrontierSWE」では、GLM-5.2はGPT-5.5を上回りつつ、Opus 4.8のスコアに約1ポイント差まで迫っています。なお、Anthropic社で最も強力な公開モデルだった「Claude Fable 5」は、6月12日の米国輸出規制指令により現在は利用できなくなっており、Code Arenaのランキング上には掲載されていますが、現在はサンプリング(評価)から除外されています。
●GLM-5.2は自社ホスティングできますか? また、どのようなハードウェアが必要ですか?
はい、可能です。MITライセンスが適用されたウェイトは、Hugging FaceおよびModelScopeからダウンロード可能です。ただし、必要なハードウェア要件は非常に高くなっています。フル精度でモデルを実行する場合、約1488ギガバイト(約1.5テラバイト)のGPUメモリが必要となり、これは8台のNVIDIA H200 GPUを並列で稼働させることに相当します。
FP8精度で実行する場合は、ウェイトの容量を約744ギガバイトに削減できますが、それでもエンタープライズ向けのGPUインフラが必要です。より低い精度の量子化バージョンを使用すればメモリ要件は大幅に低減され、出力の品質はある程度低下するものの、検証や開発用途には適している可能性があります。自社ホスティングはデータアクセスのリスクを解消しますが、実質的に導入できるのは十分なインフラを持つ組織に限られます。
●Zhipu AIと中国政府との関係はどのようなものですか?
Z.ai(旧Zhipu AI)は、2019年に清華大学発のスタートアップとして設立された北京を拠点とする企業です。OpenAIの分析によると、これまでに政府支援の投資を14億ドル(約2240億円)以上受け入れており、同社の指導部は共産党高官と定期的に接触しているとされています。また、米産業安全保障局(BIS)は2025年1月、AI開発を通じて中国の軍事近代化に寄与したとして、同社を「エンティティ・リスト」に追加しました。
中国の法律の下で登録・運営されている企業として、同社は国家情報法、データセキュリティ法、サイバーセキュリティ法の適用対象となります。これらの法律には、データやインフラへのアクセスに関する政府からの要求に対し、協力することを義務づける規定が含まれています。
元記事: GLM-5.2 Open Weights Live: Top Coding Benchmark, but API Use Carries China Data Risk
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
