若くして逝去したいちごの実質上の創業者が、全社員に配信したメールは今も脈々と受け継がれている

2025年2月4日 10:50

印刷

 いちご(2337、東証プライム市場)。不動産運用の「心築事業」/REIT事業/太陽光軸の発電事業、が3本柱。IR活動の積極姿勢は評価に値する。

【こちらも】中古マンションビジネス展開:スター・マイカが伸長局面の理由と時代背景

 日々の様に「リリース」が発信される。本稿を書き始めた1月27日には『JCGRコーポレートガバナンス指数における上位選定のお知らせ』の表題で、「一般社団法人日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)が行った東京証券取引所プライム上場企業を対象とする2024年コーポレートガバナンス調査で、当社が上位会社として33位に選定された」とする内容のリリースが送信されてきた。ちなみに今年1月24日時点のプライム企業は、1638社。

 2021年2月期こそ、コロナ禍で「29.8%減収、65.1%営業増益、7円配据え置き」もその後は「3.6%営業増益」「24.7%増益」「3.7%増益」と回復・しっかりの展開。

 今2月期は「23.4%営業増益(160億円)」計画。四季報は27.3%増益(165億円)と独自増額している。独自増額は第3四半期時点での保有するホテルのRevPAR(1室当たり売上高)が、前年同期比25%増を勘案すると納得がいく・・・

 私はいちごを語る時、前身のピーアイテクノロジーの社長:故岩崎謙治氏抜きには・・・と痛感している。1968年生まれ。52歳の若さで逝去。フジタ(最年少で所長に就任)を経て、不動産証券化の時代を見据えて入社。見込み案件収益確保に全力投球し、創業2年で上場に導く原動力となった。

 が不動産市場の活況の中、資金繰りに苦慮した。そんな中、いちごトラストの運用助言会社代表スコットキャロン(現いちご会長)と出会い、50億円の出資引き出し首の皮一枚状態で生き残った。

 更に2008年9月のリーマンショックにも身を晒した。2009年2月決算では450億円の赤字を計上。保有不動産の評価減が最大の要因。岩崎氏は「全ての膿を出し切るべき」と判断。翌年には黒字転換を果たした。等々、記し出したらキリがない。詳細は自著[Gift]を読んで頂きたい・・・。

 筋肉体質を幸いに、その後アベノミクス効果で成長階段を駆け上った。が岩崎氏はALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症に見舞われた。会長職として15年11月の東証1部上場の認定書を受け取ったのが、表にでる最後の姿となった。しかし岩崎氏は全社員に、こんなメールを残した。

 「・・・とても残念。でも同時に思う。残念ではあるが、過ぎた何かを後悔していることは自分の心にはないと。その時その時、自分なりに精一杯生きてきたなと。この会社に出会えたおかげで、私は人生を輝かせ、自分らしく生きてきた・・・」

 多々の困難を乗り越え、こんなメールを全社員に残した創業者。〆のメッセージはいちごに脈々と流れているに違いない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連記事