国産体温計で始まった世界的医療機器企業:テルモの足跡に改めて驚嘆

2023年9月19日 08:34

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2022年4月に発売した電子体温計「P237」(画像: テルモの発表資料より)

2022年4月に発売した電子体温計「P237」(画像: テルモの発表資料より)[写真拡大]

 テルモ(東証プライム市場)。医療機器大手、カテーテルなど心臓血管分野に強みと紹介される。

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 個人的なたわいもない話で恐縮だが、社会人の第1歩を踏み出した日本短波放送の兜町記者倶楽部で、テルモに「悔しい目にあわされた?」ことが頭に未だ残っている。

 倶楽部の先輩に既に上場を果たしていたテルモについて、ご両人に「凄い会社ですね」に問いかけたことがある。両先輩に悪意は全くなかったはず。が、こう問い返された。「テルモの社名の語源を知っているか」と。返事に窮していると、「ドイツ語で体温計をテルモメーテルと言うんだよ」と教えてくれた。無知ゆえの根っからの根性悪なのだろう、以来テルモがどうも好かん企業になってしまった。

 先日も新しい四季報のパラパラ読みをしていて【最高益更新】と銘打たれたテルモが、コロナ禍の影響で2021年3月期は「11.1%の営業減益」と確認し妙にホッとした。

 ただそんな話を長らくの同業者に伝えたら、「お前さん、日本を代表する企業の足跡やら何やらを知らないまま死ぬんだ、いいのかそれで」と言われた。後期高齢者まで1年の誕生日を過ぎた直後だった。瞬間、「そりゃ損だな」という想いを強烈に抱いた。歳をとると今度は、欲張りになるのだろうか・・・

 かつて企業・産業欄にテルモの創業は、故北里柴三郎博士が唯一中心になり興した民間企業「赤外線検温器」(1921年)だと記したことがある。が以降の足跡についての知識は、ほぼ皆無だった。「知らなければ、損」の一心で調べて見た。結論を急げば、「物凄い企業」である。

 ◎1963年: 国産初の使い切り注射筒を発売。64年: 初の使い切り注射針を発売。使い切り医療機器分野に進出。

 ◎1969年: 初の血液バッグ(瓶ではなく保存が安全・容易。成分別保存も可能)発売。血液事業の新たな展開を促した。73年: 血液バッグで蓄積した技術をもとに初のソフトバッグ入り輸液剤(いま我々は点滴で世話になっている)を発売。

 ◎1971年: 米国法人・ベルギー法人を設立。海外事業の展開に踏み出している。

 ◎1977年: 世界初の「ホローファイバー型人工腎臓」を発売。人工臓器分野に進出。82年: 人工肺を発売。

 ◎1985年: 血管造形用カテーテルシステムを発売。血管内カテーテルの診断・治療分野に進出。1990年代には手首から行うカテーテル診断・治療の普及と取り組む。

 ◎1996年: 中国の現地資本と合弁で血液バッグの製造・開発・販売を目的に、中国現法を設立。

 書き連ねて行ったらきりがない。意固地だった自らを猛省。

 本稿作成中の時価は年初来高値水準/IFIS目標平均株価の算出者の12名中8名が強き/などもさることながら、過去10年間の修正値ベースの株価パフォーマンスは4倍近く。「振り返ってみて良かった」と、株原稿の作成も生業とする身としてとつくづく思った。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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