テンポイノベーションは戻り試す、23年3月期は上振れの可能性

2022年10月24日 18:37

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 テンポイノベーション<3484>(東証プライム)は首都圏(特に東京都)において、飲食業の小規模事業者を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業を主力としている。店舗物件専門の家賃保証事業も開始した。転貸借物件数の増加に伴って賃料収益を積み上げるストック型ビジネスモデルである。23年3月期は転貸借契約物件数が増加基調で増収増益予想(連結決算に移行のため前年の非連結業績と比較)としている。第1四半期の好調を勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形となったが調整一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。なお11月2日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■飲食業の出店希望者向け居抜き店舗転貸借事業

 首都圏一都三県(特に東京都)において、飲食業の小規模事業者を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗(造作物が残っており、すぐに営業できる状態の物件)を転貸借する店舗転貸借事業を主力として、不動産売買事業も展開している。22年4月には子会社の店舗セーフティーを設立し、独自の審査ノウハウを用いて店舗物件専門の家賃保証事業を開始した。なおクロップス<9428>の連結子会社だが、営業上の取引はなく経営上の独立性を確保している。

 22年3月期のセグメント別構成比は、売上高が店舗転貸借事業92%、不動産売買事8%、営業利益が店舗転貸借事業80%、不動産売買事業20%だった。全社売上に占めるランニング収入(転貸借物件からの賃料収入、転貸借契約更新時の更新手数料収入など)の比率は85.9%だった。不動産売買事業は、不動産業者とのリレーションシップ強化も目的として、長期保有は行わず一定の資金枠内で資金効率を重視して売買を行う。22年3月期は5物件を売却、6物件を取得し、期末時点の保有物件数は3件となった。

■転貸借契約件数は増加基調

 店舗転貸借事業は、仲介ではなくサブリースでもなく、不動産業における第6のカテゴリーと位置付けている。不動産オーナーにとっては賃貸料収入安定、不動産会社にとっては仲介収益機会獲得、店舗出店者にとっては出店費用削減、店舗撤退者にとっては閉店コスト削減というメリットがある。また飲食業は他の産業との比較で、開業・廃業による入れ替わりが激しいため市場機会が豊富という特徴もある。さらに造作物(厨房機器、テーブル、床コンクリート、排気ダクトなど)の廃棄量を削減できるという点で、持続可能な社会の実現に貢献するビジネススキームである。

 保有物件数(転貸借物件数)の増加に伴って賃料収益(ランニング収入)を積み上げるストック型ビジネスモデルである。22年3月期の新規契約件数および後継付け件数(転貸借契約を解約後に次の転借人と転貸借契約を締結した物件)の転貸借契約件数の合計は21年3月期比29.6%増の407件となり、期末時点で転貸借契約が締結されている転貸借物件数は245件増加の1951件となった。コロナ禍で飲食業界が厳しい状況下でも、転貸借契約物件数は着実に増加している。

 なお22年3月期の成約件数は第1四半期が95件、第2四半期が96件、第3四半期が104件、第4四半期が112件で、第4四半期はコロナ禍を上回る水準となった。転貸借物件数の純増につながる新規契約が高水準な一方で、解約数は低水準で推移している。

■転貸借物件数29年3月期5500件目標

 中長期的な経営目標として、25年3月期に営業部門100名体制を構築し、26年3月期に転貸借物件純増数600件/年、27年3月期に成約数1000件/年を目指すとしている。さらに29年3月期には、転貸借物件数5500件(首都圏1都3県の当事業対象店舗数推定約11万件に対するシェア5%相当)で、売上高300億円規模、営業利益30億円規模を目指すとしている。

 成長に向けた基本方針は転貸借契約件数と賃料差益の最大化、テーマは専門特化・プロフェッショナル化としている。具体的には、22年3月期に40名だった営業人員を、年24名を目途にリーシング担当として採用し、その後、営業教育を経て高難度の仕入への異動(年4~6名)を含めて、25年3月期に営業100名体制(仕入30名、リーシング70名程度)を構築する。そして仕入エリア戦術の実行により、29年3月期に転貸借物件数5000件(22年3月期実績1951件)を目指す方針だ。

 出店希望者の募集を行う自社サイト「居抜き店舗.com」は、サイトのリニューアルや、コロナ協力金等の飲食店向け情報提供の効果によって、コロナ禍による市況の変化を出店チャンスとみる飲食店経営者のニーズを捉え、コロナ禍前よりも集客力のあるサイトへと進化している。22年3月期は、サイト総訪問数が20年3月期比69.5%増加、問い合わせ件数が48.8%増加、新規会員登録数が75.6%増加、内見数が52.2%増加した。

 なお3カ年の中期経営計画では、24年3月期売上高144億37百万円、営業利益12億57百万円、営業利益率8.7%、成約数510件、転貸借物件数2527件、25年3月期売上高164億17百万円、営業利益14億71百万円、営業利益率9.0%、成約数580件、転貸借物件数2879件の計画を掲げている。

 CSR活動としては、飲食店舗を活用した子ども食堂を19年6月から開催している。店舗の特性を活かして、子供達への食事提供にとどまらず、地域における居場所づくり、親御さんへの支援といった社会的インフラになることを目指している。コロナ禍のため開催を一時的に中断しているが、順次再開する方針だ。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。28年3月期までに流通株式時価総額のプライム市場上場維持基準適合を図るため各種取組を推進する。

 具体的には、継続的な業績向上の実現によって企業価値の向上(時価総額の上昇)を図るとともに、法定開示・適時開示にとどまらない積極的なIRによって市場に情報発信する。また必要に応じて、流通株式比率の向上に向けたテクニカルな取組も検討する。

 継続的な業績向上の実現では、市場開拓余地が大きく競合優位性も高い店舗転貸借事業に専門特化し、転貸借契約件数の最大化(29年3月期5500件目標)を通じて、サブスクリプション(ストック)型収益である賃料差益の最大化を推進することで、継続的な業績向上(目途として前期比10%~20%程度の増収増益継続)の実現を図る方針だ。

■23年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想(22年4月に子会社の店舗セーフティーを設立して連結決算に移行のため前期比増減率は非記載)は、売上高が126億55百万円、営業利益が10億59百万円、経常利益が10億74百万円、親会社株主帰属当期純利益が7億33百万円としている。配当予想は未定だが、開示が可能となった段階で速やかに開示するとしている。

 22年3月期非連結業績(売上高114億15百万円、営業利益9億09百万円、経常利益9億86百万円、当期純利益6億62百万円)との単純比較で見ると、売上高は10.9%増収、営業利益は16.4%増益、経常利益は8.9%増益、親会社株主帰属当期純利益は10.7%増益となる。

 第1四半期は売上高が30億04百万円、営業利益が2億86百万円、経常利益が3億05百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億09百万円だった。前年同期の非連結業績との単純比較で売上高は9.5%増収、営業利益は27.9%増益、経常利益は30.4%増益、親会社株主帰属四半期純利益は31.6%増益だった。

 コロナ禍でも旺盛な個人・小規模飲食事業者の出店需要に対応して積極的な仕入を実施し、転貸借物件数が順調に増加した。利益面では売上総利益率が1.4ポイント上昇した。ランニング収入の増加に加えて、店舗家賃保証事業や不動産売買事業も寄与した。

 セグメント別に見ると、店舗転貸借事業(店舗家賃保証を含む)は売上高が29億01百万円でセグメント利益(営業利益)が2億50百万円、不動産売買事業は売上高が1億02百万円で利益が35百万円だった。なおストック型収益となる店舗転貸借事業のランニング収入は17.1%増の27億13百万円だった。

 店舗転貸借事業では成約数(新規契約と後継契約の合計)が12件増加の107件(4月37件、5月30件、6月40件)と順調に推移した。期末時点の転貸借物件数は259件増加の2015件となり、初めて2000件を突破した。1000件到達に143カ月を要したが、そこから2000件までは63カ月での達成となり、転貸借物件数の積み上げが加速している。不動産売買事業は1物件を売却、1物件を取得し、期末時点の保有物件数は3件となった。

 通期予想は据え置いている。コロナ禍で飲食業界にとって厳しい状況が継続することを想定するが、コロナ禍でも旺盛な個人・小規模飲食事業者の出店ニーズに合致した「好立地」「小規模」「居抜き」店舗物件の積極仕入を推進する。そして成約数と転貸借契約物件数が順調に増加して増収増益予想としている。新規契約と後継契約の合計成約数は22年3月期比43件増加の450件、期末転貸借物件数は22年3月期末比270件増加の2221件の計画としている。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高23.7%、営業利益27.0%、経常利益28.5%、親会社株主帰属当期純利益28.6%と順調だった。転貸借物件数の増加に伴って賃料収益を積み上げるストック型ビジネスモデルであり、第1四半期の好調を勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末、23年3月末から優待内容拡充

 株主優待制度については毎年3月31日時点の株主を対象として実施している。そして22年8月には、保有株式数に応じた株主優待内容拡充(詳細は会社HP参照)を発表した。23年3月末対象から実施する。

 現行は毎年3月31日時点で300株以上保有し、且つ100株以上保有を1年以上継続している株主を対象としてジェフグルメカード5000円分を贈呈している。変更後は、毎年3月31日時点で300株以上500株未満を保有し、且つ100株以上保有を1年以上継続している株主に対してジェフグルメカード5000円分、毎年3月31日時点で500株以上を保有し、且つ100株以上保有を1年以上継続している株主に対してジェフグルメカード7000円分を贈呈する。

■株価は戻り試す

 株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形となったが調整一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。10月21日の終値は904円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円37銭で算出)は約22倍、前期実績PBR(前期非連結実績のBPS188円29銭で算出)は約4.8倍、時価総額は約163億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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