ジャイアントインパクト直後から月は地球を周回していた 英ダラム大らの研究

2022年10月5日 16:33

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 月誕生の起源としてはジャイアントインパクト説が有力で、疑いの余地はほぼないと考えられている。

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 ジャイアントインパクトは、今から45億年ほど前に、ティアと呼ばれる火星ほどの大きさの天体(ティアは実在の証拠が確認できてないので仮想上の天体とされる)が、地球に衝突した事件を指す。その際に宇宙空間にばらまかれた衝突残骸が、時間経過を経て、徐々に集結して、現在の月が形成されたというのが月誕生の現在最も有力視されているシナリオだ。

 だが英国ダラム大学の研究者らは、非常に精密なスーパーコンピューターによるシミュレーションを行い、実は月は、ジャイアントインパクト直後には既に誕生しており、かなり早い段階で地球周回を始めていたことを明らかにした。

 研究者たちは、現在の地球と月のシステムを説明できるシナリオを探すために、衝突の角度と速度、および衝突する2つの物体の質量とスピンを変化させて、何百もの異なる衝突をシミュレートした。

 従来のシミュレーションとの違いは、衝突残骸ひとつひとつの動きをより精密に再現して、解析の精度を向上させた点にある。このような精密な解析によって、従来見落としていたかもしれない月形成時に起こった事象をより忠実に再現させることが可能になったという。

 例えば、月の表面は地球に近い組成を示すが、今回の精密なシミュレーションによって、なぜ月がそのような組成を示すようになったのかを説明が可能になったのだ。また、月の内部構造を明らかにするには、実際には掘削調査が必要だが、このシミュレーション結果を用いて推測することも可能になった。

 月がどんな天体であるのかその詳細を明らかにするためには、まだまだ多くの実地調査が必要だ。今後月面探査が進み、より豊富な情報が得られた際に、その情報を再現できるより精密なシミュレーション条件を、今回示された手法によって見出すことが可能になれば、仮想上の天体ティアの実像も、45億年前に起きたジャイアントインパクトの全貌も、より鮮明にできるのではないだろうか。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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