ほぼ透明な太陽電池を開発 窓ガラスや車のフロントガラスに応用へ 東北大

2022年7月14日 07:26

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今回の研究で試作した高透明TMD太陽電池の (a)光学写真、(b) 透過率スペクトル、(c) 発電特性。(画像: 東北大学報道発表資料より)

今回の研究で試作した高透明TMD太陽電池の (a)光学写真、(b) 透過率スペクトル、(c) 発電特性。(画像: 東北大学報道発表資料より)[写真拡大]

 東北大学は12日、ほぼ透明な太陽電池の開発に成功したと発表した。この太陽電池は、可視光線の80%以上を透過し、ほぼ透明だという。窓ガラス、車のフロントガラス、ビニールハウスなどさまざまな場所での応用が期待される。

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■透明な太陽電池の意義

 太陽電池の設置は街の景観維持などの観点から、規制を受ける場合がある。例えば、多数の世界遺産を有する歴史と観光の街、京都などだ。京都では、町の景観維持の観点から、自治体が条例などで太陽電池の設置に規制を設けている場合がある。

 しかし、透明な太陽電池なら窓ガラスなどにも設置できるために街の景観を害することはない。これはほんの1例で、透明な太陽電池の応用範囲はまだまだ幅広い。

 ただ、これまで開発されてきたいわゆる透明な太陽電池は可視光線の透過率が60%以下の「半透明」太陽電池がほとんどだった。

 今回研究グループが開発したほぼ透明な太陽電池は、可視光線の透過率が80%を超え、肉眼ではほぼその存在を認識できない。そのため、窓ガラス、車のフロントガラス、ビニールハウス、メガネ、人間の皮膚などさまざまな場所で活用できる可能性があるという。

■2次元シートを活用して開発

 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、遷移金属をカルコゲン原子で挟み込んだ、ナノスケールの厚さを持つ非常に薄いシート状の物質で、2次元シートと呼ばれる。非常に薄いためにほぼ透明だ。同じ2次元シートとしては、2010年にノーベル物理学賞受賞の理由となったグラフェンなどがよく知られている。

 研究グループは、このTMDを活用し、さらに電極の部分に工夫を凝らすことで、可視光線の透過率が80%を超えるほぼ透明な太陽電池の開発に成功した。

 さらにこのようにして開発したほぼ透明な太陽電池を、1cm2の基板上に集積し、市販の小型センサーなどの駆動に必要な実用的な電力発生にも成功した(~420pW)。

 研究グループでは今後、このほぼ透明な太陽電他の性能を上げると共に、大面積化を図り、窓ガラス、車のフロントガラス、ビニールハウスなどさまざまな場所での応用展開を図っていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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