SMBC日興が「異常なガバナンス」と総括されて、SBIの存在感がクローズアップ!

2022年7月2日 07:10

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 「株屋」と呼ばれて来た証券会社に対するイメージは、近年大きく変わっていた。問題が起こる度に新しい決まりが生み出されて、ガッチガチの規制のかたまりのような証券業界になってはいたが、それでも心配の芽が取り除かれた安心感はあった。昔のイメージに馴染みのない若年層もおっかなびっくり、ネット証券を利用して裾野の拡大に寄与している。

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 一般的には、中小の得体の知れない業者は別にして、大手どころであれば真っ当な商売が行われている時代になったと、理解されていた筈だ。

 それをぶち壊したのが、三井住友フィナンシャルグループ(FG)という超一流の企業グループの一員であるSMBC日興証券だったから、第一報が報じられた時には驚愕が業界を駆け抜けた。速報を耳にした業界関係者が「そんな決まりきったことを、何故やったのか?」と困惑してインタビューに答えていたのが、驚きの大きさを端的に伝えている。

 大株主から大口の株式の売却を依頼された時、多くの投資家に分散して売却する「ブロックオファー」というありふれた取引を受けた際に、当該株式が値下がりしないように会社の資金で買い支えていた。

 証券業界に身を置くものであれば、一般社会の「ヒトのものは盗まない」に相当する位当たり前の禁止事項である「相場操縦」が、証券会社の第一線で悪びれることなく、業務として継続的に行われていたという。甚だしいのは、社内で相場操縦を評して「会社の利益に貢献する行為だ」と、自負する者までいたということだろう。

 三井住友FGは銀行をトップにする企業グループで、再三変転を繰り返した挙句にグループに納まったSMBC日興証券にとって、肩身が広かろう訳がない。グループ内で企業が格付けされるのは概ね利益の金額順であるから、肩身の狭さと存在感を向上させるために、利益計上に必死になっていただろう。副社長が銀行出身であることも号令の力強さをいや増しただろうが、結局はそれが仇となってしまった。

 20年4月に、三井住友FGとSBIホールディングス(HD)が、スマホ向け金融サービス等のデジタル分野を中心とする包括提携に進んだ際には、メガバンクとネット証券の最大手が手を組んだと話題になった。

 提携には双方が足りないところを補完しようとする思いが滲む。三井住友FGはネット分野の強化を目論み、SBIHDが熱い視線を送ったのは、メガバンクの顧客基盤やSMBC日興証券の141以上に及ぶリアル営業拠点と、3000人を超えるリアル営業体制だ。

 SBIHDのメイン銀行はみずほ銀行だが、北尾吉孝社長の胸中にみずほ銀行への配慮はないだろう。そんな気配りをしていたら、SBIHDが第4のメガバンク構想を描くような存在に昇り詰めることはなかった。時々の最適解を引き続けたから今日があるということは、誰よりも北尾社長が自覚している。

 そんな北尾社長は、6月24日に相場操縦事件の調査委員会が、「ガバナンスが異常な状況」と結論付けた報告書をどんな思いで見つめただろう。狙い定めた獲物が勝手にコケている状況は、北尾社長の強運の一端を象徴しているようにも見える。何しろ、「SBI証券とSMBC日興証券が統合か?」いう観測記事まで出現しているのだから・・・。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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