業務スーパー神戸物産創業者:沼田氏が生涯を賭けた第2の起業とは

2022年6月21日 07:25

印刷

 企業・産業欄に、業務用スーパー:神戸物産(東証プライム)を記したことがある。「AIを採用した実証店舗開業」、というニュースが流れた時だった。AI活用でビジネスが例えばどんな風に変わりうるのかを記し、そもそも業務スーパー:神戸物産とは、に言及した。

【こちらも】AI採用の実験店舗開業、業務スーパー:神戸物産の収益好調をどう読むか!?

 また地熱発電について物知り顔で「地熱王国:日本の現状」「何故、地熱発電エネルギー比率が低率にとどまっているのか」を記し、「(地熱)関連銘柄は」までピックアップしたことがある。

 何故、こんな書き出しになったのか。神戸物産の創業者:沼田昭二氏(58歳という若さで2012年に子息に会社を譲り、全役職から身を引いた)の「今」、を知ったからである。

 6月12日のテレ朝newsが、『業務スーパー創業者が「地熱発電」に挑戦 世界3位の眠れる資源活用「やりとげる」』と題する記事を配信した。

 業務スーパー創業者とは、改めるまでもなく沼田氏である。詳細は上記記事をお読みいただくとして、人の褌で相撲を取る非礼は覚悟で要点を記しておきたい。「日本の将来を憂うる、真の起業家・実業家」を実感したからである。

■「町おこしエネルギー」という新会社を起こし臨んでいる理由: 「地熱発電の世界は、地下1キロ、2キロの世界。成功の確率が悪い。5本、10本掘っても1本しか当たらない。外れた場合は埋め戻す。その場合は数千万、数億円を一括損金処理しなくてはならない。株主がいる上場会社では、そんな失敗・リスクを冒せない・・・残りの人生をかけてやっていきたい」(沼田氏/以下同じ)。

■現状: 熊本県の山中で「地熱発電所」を建設中。掘削作業の終わった生産井(せいさんせい:高温高圧の蒸気を取り込む井戸)と呼ばれる井戸の横で、2本目の井戸の掘削工事が行われている。「地熱発電は、どんな理由があっても24時間安定的に発電することが求められる。万が一生産井にトラブルが生じた時のための補充井」。既に開発現場では噴気テストも終わり、1時間に50トンの蒸気量を確認。5kW/約8000世帯の電力を賄う状況が確認された。再来年4月稼働予定。売電収入は年間14億円が見込まれている。

■日本の発電事情: 21年度の財務省貿易統計は、鉱物性燃料の輸入総額を19兆8000億円としている。「高齢化・少子化で貿易収支の赤字化の最大要因は化石燃料の輸入。これをできるだけ早い時期に止めなくてはいけない。地熱発電の設備利用率は7割と高い。最も効率的な再生エネルギーだ」。

■専門学校: 沼田氏は「町おこしエネルギー」を広めるために、東奔西走。ぶち当たった問題があった。掘削業者不足。「殆どの方が60歳代から70歳代。あと10年もすれば特殊な技術が消えてしまう危機感が強い」。そこで地熱開発の候補地の1つでもある北海道白糠町に、これまで最前線に立ってきた第1人者・専門家らを講師にした『掘削技術専門学校』を開設した。

 つくづく思う。いつまでも「地熱発電」目標シェアは低位に置かれている。沼田氏が「一生をかける」としている事業こそ、国が率先垂範すべきではないか!(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事