来週の相場で注目すべき3つのポイント:ウクライナ情勢、米FOMC、米中小売売上高など

2022年3月12日 18:57

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記事提供元:フィスコ


*18:57JST 来週の相場で注目すべき3つのポイント:ウクライナ情勢、米FOMC、米中小売売上高など
■株式相場見通し

予想レンジ:上限26000-下限24000円


来週の日経平均は神経質な展開か。15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を睨んだ神経質な展開が予想されるほか、引き続きウクライナ情勢にも注意を払う必要がありそうだ。


先日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言で、3月FOMCでの0.25ptの利上げは濃厚。注目点はFRBメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)とバランスシートの縮小(QT)の開始時期への言及などだ。市場は現在年内に残る7回全てのFOMCで0.25ptの利上げが行われることをほぼ織り込んでいる。このため、ドットチャートの結果がタカ派サプライズとなる可能性は低い。むしろ、ドットチャートの中央値が市場予想より少ない利上げ回数を示唆する可能性もあり、この場合は相場の下支え要因となりそうだ。


また、QTについては年明け以降の高官発言や議長の議会証言により、年央からの開始や3年程度の時間をかけて行われていくことなどは既に分かっている。ウクライナ情勢を背景とした景気減速懸念を考慮して、この開始時期を遅らせるかどうかが注目される。一方、ECBが量的緩和策の縮小ペースを加速させるなど既にタカ派寄りの政策決定を下していることもあり、FRBが従来どおり年央からのQT開始を示唆しても、大きなネガティブサプライズにはならないだろう。


ただ、パウエル議長は経済データ次第ではこの先0.5ptの利上げもあり得るとしているが、市場はこの点についてはまだ十分に織り込み切れていない。ウクライナ情勢の緊迫化後に起きた資源価格の高騰により、CPIは今後も高止まりする見通し。このため、5月のFOMC以降での大幅利上げの可能性は十分に残されており、今回のFOMC通過だけで相場が本格的に持ち直すとは考えにくい。


他方、ウクライナ情勢にも依然として目配りが必要だ。経済制裁が相次いでいることで、既に制裁に関するヘッドラインに対しては織り込みがかなり進んでいる。また、ロシアとウクライナの外相会談は物別れに終わり失望感を誘ったものの、逆に混乱長期化というシナリオを相当織り込んだ。このため、地政学リスクが株式市場に及ぼす影響は徐々に和らいでくるだろう。今後は、経済制裁が景気や企業業績に及ぼす実質的な影響を見極めていく局面になろう。ただ、ロシア軍の首都キエフへの総攻撃の可能性が高まるなか、攻撃がさらにエスカレートする可能性もあり、短期的にはヘッドラインに反応する展開がもうしばらく続きそうだ。


そのほか、ドル・円が1ドル=117円を突破し、資源価格の高騰と相まって国内インフレへの懸念も高まっている。週末にかけて日銀金融政策決定会合も注目されよう。


景気悪化の懸念が根強いなか、製造業系の景気敏感株は買いづらく、金融引き締め懸念がくすぶることでグロース(成長)株も買いづらい。相対的な安心感や3月期末に向けた配当権利取りの動きも踏まえると、引き続き三井物産<8031>などの商社株や商船三井<9104>などの海運株が物色の中心となりそうだ。


■為替市場見通し


来週のドル・円は底堅い値動きか。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融正常化に向けた利上げ再開が織り込まれ、ドル買いを引き付ける展開となりそうだ。また、ウクライナ情勢の混迷が続き、安全逃避のドル買いも継続するとみられる。


今週発表された2月米消費者物価コア指数(CPI)は1月実績を上回り、インフレ高進が鮮明となった。ただ、いずれも市場予想と一致したことから、FRBによる過度な引き締め期待を弱めたようだ。来週15-16日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.25ポイントの利上げが予想されるが、足元では資源相場が急騰しており、インフレ抑制の目的で金融引き締めの姿勢が提示された場合、金利高・ドル高の要因となりそうだ。


一方、ロシアとウクライナの停戦交渉は合意への道のりが険しく、トルコを交えた3カ国外相会談も不調に終わった。ロシアのプーチン大統領は「停戦交渉である程度の前向きな動きがあった」と述べたが、ロシアはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を取り下げるまで攻撃を続ける可能性があるため、安全逃避のドル買いがただちに縮小する可能性は低いとみられる。


なお、欧州中央銀行(ECB)理事会は資産買入れ規模の縮小を決め、改めて緩和政策からの転換を示した。ただ、ECB内には早急な金融引き締めに慎重な意見も根強く、ユーロ売り・米ドル買いがすみやかに縮小する可能性は低いとみられる。ウクライナ問題をうけたエネルギー供給不安もユーロ売りの要因となり、ドルの上昇を支援しよう。


■来週の注目スケジュール

3月14日(月):中・マネーサプライ(15日までに)、欧・ユーロ圏財務相会合など
3月15日(火):中・鉱工業生産指数(2月)、中・小売売上高(2月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(3月)、米・生産者物価コア指数(2月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)(16日まで)など
3月16日(水):日・貿易収支(2月)、日・鉱工業生産(1月)、中・新築住宅価格(2月)、米・小売売上高(2月)、米・パウエルFRB議長の記者会見など
3月17日(木):日・コア機械受注(1月)、日銀政策委員会・金融政策決定会合(18日まで)、守谷輸送機工業が東証2部に新規上場、英・イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利発表、米・住宅着工件数(2月)、米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(3月)、米・鉱工業生産指数(2月)、欧・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁の講演など
3月18日(金):日・消費者物価コア指数(2月)、日・黒田日銀総裁の会見、露・ロシア中央銀行が政策金利発表、米・中古住宅販売件数(2月)、米・景気先行指数(2月)など
3月20日(日):米・全米企業エコノミスト協会(NABE)経済政策会議(22日まで)《YN》

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