AIでデータ機密性保ちながら不正送金検知 複数金融機関と実証実験 神戸大ら

2022年3月11日 16:19

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被害取引検知の概要(画像: 神戸大学の発表資料より)

被害取引検知の概要(画像: 神戸大学の発表資料より)[写真拡大]

 マネーロンダリングや振り込め詐欺などの金融犯罪への対策として注目されているのが、AIによる不正取引の自動検知である。しかし、AIの活用には大量の学習データとなる金融取引データが必要となるが、機密保持の観点からデータ共有が難しい点が課題であった。

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 情報通信研究機構(NICT)と神戸大学は10日、データの機密性を保ったまま機械学習を行うシステムを開発し、複数の金融機関と連携して実証実験を行った結果、不正送金の早期検知をすることに成功したと発表した。

 現状では、多くの金融機関は人手で不正取引を検知しているため、コストも高く担当者の経験に依存する部分も大きい。そこでAI技術を用いた検知システムが検討されているが、十分な学習データの確保が大きなハードルとなっている。

 単独の金融機関では十分なデータは用意できないが、個人情報などの保護の観点からは複数の金融機関で協力することも難しい。そのため、AIを用いた自動検知システムの普及が進んでこなかったという経緯があった。

 そこでNICTと神戸大は、データを外部に開示することなく機械学習を実施できる「プライバシー保護連合学習技術」を開発。この技術は、暗号化したままデータ学習を行うことで、データの外部漏洩を防ぐことができるものである。今回行われた実証実験では、複数の金融機関と連携して不正取引の検知が試みられた。

 その結果、被害検知では2行の銀行のデータを用いて学習したAIの検知精度が、80%以上を達成。また、1行のみのデータを用いて学習したAIでは検知できなかった不正取引も検知された事例が確認された。また、加害検知においても4行のデータを用いたAIで検知率80%以上を達成し、20から50週程度早く検知できることも確認された。

 NICTおよび神戸大は、今後もより高い検知精度を達成するために実証実験を継続していくとしている。また、将来的には銀行における不正送金検知業務への実運用が期待される。

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