あくまで「プライム移行」とする企業と、「スタンダードで」という企業の立ち位置

2022年2月4日 07:18

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 昨年12月27日の企業・産業欄に、『ダイオーズが描く、プライム市場移行のシナリオ』と題する記事を投稿した。周知の様に東証は4月から、市場再編を実行に移す。

【こちらも】ダイオーズが描く、プライム市場移行のシナリオ

 だが東証1部企業の中には最上位市場:プライムの上場基準を満たしていない企業がある。東証は「経過措置」を設け「基準を満たす為の計画書」の提出を求めている。ダイオーズも対象の1社で、「至2026年3月期の中計を達成することで、結果として(流通株式数)基準を満たす」旨を東証に提示し東証も受理したという内容である。

 ただ東証再編に際し、「(プライムに次ぐ、)スタンダードでOK」とする企業も少なくない。大正製薬HD、クックパッド、巴コーポレーション、串かツ田中HD、日本オラクル、エバラ食品工業など知名度の高い企業も多い。エバラ食品の森村剛社長は、「新規事業、海外事業、設備投資など商品・質・サービス向上に関わる費用に経営資源を投下していきたい」とその理由を明らかにしている。ある種、頷けるものを感じる。

 対して経過措置を活用しプライム移行に積極的な姿勢を示す企業も多い。例えば金融システムソ・リューション事業で伸長中のニーズウェル。船津浩三社長は、こう熱っぽく語っている。「プライム市場の上場基準は当社にとって、ハードルは高い。いままでの事業のやり方では達成が難しい。東証の再編は、他社との関係を深めるなど従来考えてこなかった事業拡大の取り組みを実施するキッカケを作ってくれた」。

 23年9月までの基準達成計画書を提出しているが、「倉庫管理システムを開発し、物流ビジネスに参入する」「AIの技術を持った企業との提携、M&Aの推進」が柱になっている。「船津さんには1部市場に移行(19年)の後に、新卒採用や新規の顧客開拓がより有利になったという認識が強い。プライム移行は更なる進歩の契機になるという思いがある」と解説されたりもしている。

 口の悪い兜町の住人に照準を合わせ、「日本郵政が大量の株を保有していることから流通株式率が基準に満たない、かんぽ生命やゆうちょ銀行をどう見ているか。プライムでなくては社会的信用の低下につながるとしているが・・・」と聞いた。彼らは、「既に社会的信用を失っている」と口を揃えた。

 そんな口の悪い面々が好意的な姿勢を示したのは、東京一番フーズと高嶋。前者は国産フグ料理店を展開しており、「米国にも進出していて、この3月からは空輸でフグ・海鮮品を米国に卸す計画だ。日本を代表する料理が世界を席巻する助けにプライムがなるのなら上々。フグはいい・・・」と異口同音。

 後者は建材や電子部品の専門商社。「1度は経営危機に陥ったが現4代目社長が社外取締役制をいち早く導入するなどして、苦境を乗り切った。今回も古参役員に対し高島幸一社長は若手役員の先頭に立ち、何故プライムかを説きに説き、経過措置に踏み切った。我々は辛酸をなめ立ち上がった企業のファンだ」とした。

 ところで機械商社の椿本興業の経過措置計画案には、時代の流れを感じた。1日平均売買代金基準を満たしていない。「株主還元策の拡充」を約し、かつ「IR資料の英語版を用意する」としたのである。 (記事:千葉明・記事一覧を見る

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