石油備蓄放出はインフレ抑制の切り札になるか!?

2021年11月26日 16:36

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●世界的な戦略として戦略石油備蓄を放出

 米国バイデン政権は23日、日本、中国、インド、韓国、英国と協調して、戦略石油備蓄の放出を決定した。今後、数カ月かけて放出すると見られている。

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  要請を受けて、岸田首相も24日に石油備蓄法に反しない形で、一部売却する方針を表明。日本では民間備蓄を放出したことはあったが、国家備蓄を放出するのは今回が初だ。高騰している原油価格の抑制を目的としており、異例の対応となった。

 再任されたパウエルFRB議長もインフレの抑制が1番の課題と発言するなど、インフレへの対応が特に米国では課題となっている。

 戦略石油備蓄放出はガソリン価格の値下げに繋がることが期待されるが、果たして、インフレ抑制の切り札となり得るのか?

●戦略石油備蓄とは?

 米国では、1973年に起きた第4次中東戦争時、アラブ産油国が対米禁輸措置を取ったことで、大きな混乱に陥った。その反省から、戦略石油備蓄(SPR)が定められた。今回、SPR総量の約8%を放出すると報じられている。

 日本でも第1次オイルショック後の1975年に石油備蓄法が制定。その後改正を経て、現在は国家備蓄は国内需要の最低90日分以上、民間備蓄は最低70日分以上を備蓄することとなっている。今回は、数日分を放出すると見られている。

●効果は限定的との声も

 石油備蓄放出の報道が出てからも、WTI原油先物の価格は下がらなかった。効果があっても、短期的なものに留まる公算が高いからだ。

 放出しても、また備蓄のための石油が必要になるため、焼け石に水との声もある。産油国が有利になるだけとも言われている。

 産油国でもある米国と、日本のような非産油国の備蓄放出は、意味も大きく異なる。

 今回、バイデン政権が石油備蓄放出を決断した背景には、深刻な支持率の低下もある。来年の中間選挙を見据えて、インフレ対策に取り組んでいるという政治的パフォーマンスに過ぎないという厳しい意見もある。

 天然ガス価格の上昇と同様に、脱炭素化に性急に舵を切りすぎたことの反省と、シェールガス採掘禁止の見直しに手をつけなければ、抜本的な解決にはならない。

 新型コロナの感染再拡大やOPECの増産などの要素で原油が下がることもあり得るが、石油備蓄放出は、切り札とはならない可能性が高い。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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