干ばつ環境を屋内で再現 気候変動に耐える作物開発へ 農研機構らの研究

2021年10月28日 11:15

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人工気象室内に設置したポット・システム(iPOTs)を使ったイネの栽培風景(画像: 農研機構の発表資料より)

人工気象室内に設置したポット・システム(iPOTs)を使ったイネの栽培風景(画像: 農研機構の発表資料より)[写真拡大]

 近年では地球温暖化などの気候変動によって、世界中の農地で干ばつや荒廃が進んでいる。そのため、気候変動に耐えうる作物の品種開発が求められているが、気候変動が進んだ後の環境を想定した作物開発の仕組みは確立されてこなかった。農研機構やかずさDNA研究所らは27日、ポット底面からの給水によって、屋内で干ばつ状態を再現できるシステムを開発したと発表した。

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 作物の干ばつ耐性を評価する場合、自然の雨の影響を受けにくい屋内での試験が必要となる。だが屋内での試験では、作物への水の与え方が自然環境と大きく異なるなど、環境を忠実に再現することが難しいとされてきた。そこで今回の研究では、ポットの底面から水を与えるアプローチを採用することで、自然環境に近い水環境が再現された。

 試験に用いられるポットには、温湿度や照度、土壌水分などをリアルタイムで計測できるセンサーを設置。作物を取り巻く環境をリアルタイムで計測してモニタリングすることが可能となった。また、無線LANでつながったPCなどからポットの水位を個別に制御することもできる。ポットはX線に対する耐性も有するため、X線CTなどでの経時観察にも適しているという。

 今回開発したポットを用いて、実際に屋内で干ばつ状態を再現して2種類のイネへの影響を調査。その結果、干ばつに強い品種のイネは根がより深くなることが、X線CTでの経時観察で明らかになった。このように、今回開発したポットによって屋内環境で作物の干ばつ耐性や生育の違いを調査することが可能となった。

 将来的な気候変動に向けて、今回の研究で開発されたシステムで作物開発を進めることができれば、より迅速な対応が可能となる。農研機構らは、ポットシステムの正式な製品化は未定だが今後改良を重ねていく予定であると述べている。

 今回の研究成果は7月1日付の「Technical Advance」誌のオンライン版に掲載されている。

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