口腔細菌が大腸癌の発生に関与か 鹿児島大らが世界初の発見

2021年9月28日 11:37

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研究結果からの今後の展望(画像: 鹿児島大学の発表資料より)

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 口腔細菌が様々な病気に関係していることはこれまでにも知られている。鹿児島大学らの研究グループは、口腔細菌が大腸癌の発生や進行に関連している可能性と、大腸癌発生に関わる細菌を世界で初めて発見したと発表。今後、大腸癌の予防や診断に重要な役割を果たしていくことが期待できる。

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 この研究は、鹿児島大学の杉浦剛教授の研究チームと鹿児島大学病院消化器外科、大阪大学微生物病院研究所との共同研究によって行われ、医学雑誌Cancersに掲載された。

 口の中には約700種類もの細菌が住んでいるという。その中には、虫歯の原因になる菌や、歯周病の原因になる菌なども含まれており、歯周病の原因菌は高齢者の誤嚥性肺炎の原因になることが知られている。その他にも、口腔細菌が心筋炎やアルツハイマーにも関連していると言われている。

 今回研究チームは、健康な51人と大腸癌患者52人の唾液と便を集め、遺伝子レベルで比較。その結果大腸癌の患者だけが持つ菌が4種類見つかった。この菌は、従来大腸癌から検出されていた菌とは異なる菌種であり、もともとは口腔内にあるものが大腸にも存在していたものだった。

 さらに、大腸癌患者のうち、初期(ステージI、II)の26人と進行癌(ステージIII、IV)の26人について調べた。すると大腸癌患者に特異的な菌のうちの1種類が、進行癌患者のみで特に増えていることがわかったという。

 今回の研究により、これら4種類の口腔内細菌が大腸癌の発生や進行に関連していることが示唆される。そして、口腔内の細菌は大腸まで移動し定着するということもわかった。

 この研究結果から考えられる可能性はいくつかある。まず癌に特異的な細菌が、癌の発生や進展に影響を与えているかもしれない、というものだ。その場合は、口腔内細菌を早くからコントロールしていくことで、大腸癌の予防ができる可能性があるだろう。

 また唾液中の口腔内細菌を調べることで、大腸癌の検査ができるようになるかもしれない。便を採取するよりずっと簡単になり、多くの人が気軽に大腸癌検査を受けられるようになるだろう。

 今後さらに大腸癌とこれらの細菌の関わりを明らかにしていくことで、この細菌を利用した大腸癌予防、検査、治療などが実現していくことに期待したい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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