終末期医療を手掛ける「医心館」の柴原氏に、心底敬意をはらう理由

2021年8月19日 07:45

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7月1日にオープンした「医心館 福島」。(画像: アンビスの発表資料より)

7月1日にオープンした「医心館 福島」。(画像: アンビスの発表資料より)[写真拡大]

 アンビスホールディングス(7071、アンビスHD)は「医心館」を展開(2020年9月末時点で29施設)している。有料老人ホームに括られる。だが詳細は後述するが、存在感は特異。そしてその設立の経緯に創業者社長:柴原慶一氏の「人生訓」を覚える。

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 柴原氏は名古屋大学医学部卒後に「遺伝子情報の複製機構の解明」を研究テーマに、京都大学大学院研究科(分子生物学)に学んだ。京都大学大学院医学部助手を経てコールドスプリングハーバー研究所研究員、科学技術振興事業団主任研究員、国立遺伝学研究所准教授を歴任というキャリアの持ち主。

 そんな柴原氏だが「長らく迷った」という。「人生に第2章があってよいのではないか」と。決断したのは2010年。研究室を閉め、事業家への道に踏み出した。

 「地域再生医療」を掲げていた岩手県に移住。「公的病院の福祉への再活用」「東日本大震災復興支援」「社会福祉法人設立」「民間医療法人のM&A・事業再生」などを実体験。13年に訪問看護・訪問介護事業のアンビスを設立。翌14年には医心館事業に進出している。

 医心館とはいったいどんな存在なのか。アンビスHDでは、こう説明する。「末期がんや人工呼吸器に頼らざるをえない、あるいは特定疾患や障害があるなど慢性期・終末期医療を受けている人々の中には、自宅や介護施設で療養を望んでも安心して送れない人がいる。在宅型“病床”の医心館では24時間365日体制で看護師によるケアと見守りが可能。外部の医師やケアマネジャーとの連携で、痛みや苦しみなく過ごしてもらえる安らぎの療養所」。具体的に噛み砕いていくと、こんな具合だ。

 (I)夜間でも看護師、介護士がそれぞれ1人常駐している。

 (II)看取りまで行う。

 (III)主治医がいない場合は、病状に適した在宅医療の医師を紹介。ケアマネジャーに関しても同様。

 (IV)万が一の緊急時には24時間365日、家族の面会が可能。

 (V)リーズナブルナの入居費用(家賃・管理費・食費)。

 我が住処:埼玉県にも数カ所の施設が展開されているが、(V)を確認するために今年10月に開設予定の「医心館 越谷」を覗いてみた。「入所一時金:0円」「賃料:4万8000円」「管理費(水道光熱費):1万3500円」「食事代(1食1080円×30日):3万2400円」。計9万3900円。確かにリーズナブルな料金設定といえる。

 医療機関は当該病の治療が済んだ段階で退院となる。「短期入院・在宅医療/看護」が世の流れ。その意味でアンビスHDの「医心館」は、世・時代のニーズに沿った存在といえる。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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