アスパラガスの成分に血圧下げる作用 緊急手術などでの活用期待 理研らの研究

2021年8月16日 17:02

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アスパラガスのカルス(左)とアスパラプチンAの構造式(右)(画像: 理化学研究所の発表資料より)

アスパラガスのカルス(左)とアスパラプチンAの構造式(右)(画像: 理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 アスパラガスには血圧を下げる作用があり、その血圧を下げる成分のうち明らかになっているものもあった。理化学研究所(理研)の研究グループは11日、アスパラガスに含まれる成分アスパラプチンAという物質に、血圧を下げる作用があることを発見したと発表。このアスパラプチンAは、短時間強く血圧を下げるという特徴を持っていた。これは緊急手術のために短時間の降圧が必要な時などの医療現場で役立つことが期待される。

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 この研究は理研の中林亮研究員、斉藤和季グループディレクターらの研究グループにより行われ、4日のJournal of Agricultural and Food Chemistryオンライン版に掲載された。

 同研究グループは、2015年にアスパラガスからアスパラプチンという物質を発見し、それがACE阻害作用を持つことを明らかにしていた。ACEとは血圧を上昇させるアンギオテンシンIIというホルモンが作られる時に働く酵素だ。アンギオテンシンIIは血管を収縮させ、血液量を増やして血圧をあげる。このACEを阻害するとアンギオテンシンIIを作れなくなり、血圧上昇が抑えられる。

 そもそも、人の体には体の状態を常に一定にしておこうとする「恒常性」という仕組みが備わっている。その仕組みの1つとしてアンギオテンシンIIなどの血圧をあげる働きがある。本来一定に保つための働きのはずが、加齢や食事の影響で血管が硬くなったり、塩分摂取が多くて血液の量が増えてしまうなどの理由で、現代では血圧は高くなりがちだ。

 研究グループは、今回このアスパラプチンがアスパラガスの中でどうやって作られているかを、新たに開発した解析方法を用いて明らかにした。またその解析方法により、アスパラプチンと類縁の物質、アスパラプチンB、Cを新規に発見。さらにマウスにおいて、アスパラプチンが血圧を下げる働きをするかどうかを検討した。

 その結果、アスパラプチンAはバリンという硫黄元素を持っているアミノ酸を材料にして作られていることがわかった。硫黄元素を持っている代謝物は人にとって有益な働きを持つもの多いことが知られている。さらに、アスパラプチンと非常によく似た構造をしているアスパラプチンB、アスパラプチンCを発見した。

 次にアスパラプチンAをマウスに経口投与したところ、1時間で血圧は下がり始め、2時間後に一番血圧が低くなった。その効果は2日後には消えて、通常の血圧に戻ったという。

 現在人で使用されているACE阻害薬は1日1回服用すればいい、いわば長時間効果が続く薬品である。通常は血圧を安定させるにあたって長時間効果がある薬は良い点が多い。だがたとえば緊急手術中のみ血圧を下げたい場合には、強い降圧効果を持ち、持続時間が短いアスパラプチンAが有用となる。

 今後、アスパラプチンAの特徴が、健康維持や医療現場で役立っていくことが期待される。また今回用いた解析方法によって、アスパラガスからさらに効果の強い物質を見つけられる可能性もあるだろう。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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