微生物が生成する酸素量、地球自転速度の減速で増加 ミシガン大の研究

2021年8月6日 08:54

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 地球誕生以来46億年の歳月が流れたが、誕生当時の自転速度は現在よりもかなり速く、1日の長さはわずか5時間程度であったと考えられている。現代人の生活は1日24時間が常識となっているが、科学的に厳密な言い方をすれば、1日の長さは時間の経過とともに長くなっている。

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 とはいえ、1日の長さが長くなる割合は20年で1万分の1秒程度であり、私たちが1日の長さが長くなったと体感できるレベルほど、自転速度が遅くなっているわけではない。だが46億年にも及ぶ地球の歴史をたどってゆくと、自転速度の減速が現在の地球環境に及ぼしてきた影響は、無視できないほど大きなものであったということが、最近の研究で明らかになってきた。

 8月2日に科学雑誌Nature Geoscienceで公表されたミシガン大学の研究者たちによる論文で、1日の長さが長くなっていった歴史が、地球大気中の酸素量を増加させる方向に作用したのではないかという仮説が提起されている。

 この研究では、地球誕生直後である46億年前から、5億4千万年前までの間の期間に相当する先カンブリア時代の1日の長さと、微生物活動の関係を調査。1日の長さが長くなっていくにつれて、微生物が生成する酸素量は増加した。その結果、地球上に存在する炭素を酸化しても、酸素がその反応で消費し尽くされなくなり、余剰状態が発生。それが大気中に拡散してゆくことで、酸素濃度が高まっていったのではないかとの結論に達している。

 先カンブリア時代と言えば、生物がいたのは海中においてのみで、陸上ではまだ生物が生息できる環境にはなかった。海中に炭素がたくさん存在する状況下では、太陽光を妨げる有機化合物が多く浮遊しており、微生物が光合成をおこなうために必要な太陽光の妨げにもなっていた。

 だが1日の長さが長くなることによって、微生物が光合成を営める時間が増えた結果、海中に溶け出す酸素量が増加。その酸素が海中の有機化合物中の炭素を酸化し、海の濁りを取り除いていったことで、より多くの太陽光が海中まで届くようになり、微生物が多くの酸素を作り出せるようになったのだ。

 その結果、大気中に酸素が行き渡るほどの余剰酸素が生まれ、やがて陸上で生物が生息できるような環境をもたらしたのではないか。私たちが享受している幸せな生活も、実は何十億年にもわたる地球上で繰り広げられてきた様々なドラマの結果なのである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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