体操選手は特徴的な脳ネットワーク持つ 感覚・運動・注意などで 順大の研究

2021年7月30日 16:27

印刷

研究で明らかになった世界クラスの日本人体操競技選手の脳の特徴(順天堂大学の発表資料より)

研究で明らかになった世界クラスの日本人体操競技選手の脳の特徴(順天堂大学の発表資料より)[写真拡大]

 順天堂大学らの研究グループが、MRI(磁気共鳴画像装置)による脳ネットワークの解析により、世界クラスの技能を持つ日本の体操選手には、特徴的な脳ネットワーク構造があるとする研究成果を発表した。優れた体操選手は一般人と比べ、運動・感覚・情動など体操競技に関連した脳の神経接続の強度に秀で、神経接続の強度は競技成績と相関があることも明らかにした。

【こちらも】社会的行動に関わる脳細胞を発見 神戸大など

 研究は、体操選手の高度なパフォーマンスを支える神経基盤を明らかにする狙いで実施。世界大会での入賞歴がある日本の体操選手10人と、体操競技経験がない10人を対象として、MRIによる脳の拡散強調像(脳内の水分子を画像化したもの)を撮像。画像を同じくMRIの脳のネットワーク解析法を使い、両者の脳の構造的な接続を比較検討した。

 競技成績と脳の構造的な接続性についても解析したところ、体操選手は、一般人と比べて、感覚・運動、注意、視覚、情動といった体操競技に関わる脳領域の神経接続が強いことがわかった。

 これらの神経接続は、床運動が空間認識や運動学習などの脳領域、平行棒が視覚運動知覚、感覚運動を司る脳領域など、それぞれの競技の成績と有意な相関関係があることも判明。一部の脳領域の知覚が強いだけでは、競技パフォーマンスへの好影響は少なく、複数の脳領域を結ぶ神経接続が肝だという。

 脳機能と競技成績の相関は、今回の研究グループが2020年11月に発表した先行研究でも明らかになっていた。

 この先行研究では、MRIの脳の3次元像をもとに、体操選手と一般人の脳灰白質体積、競技力を比較解析。その結果、体操選手は、運動や空間認識、視覚、感覚情報の統合、実行機能など体操競技に関わる機能を制御する脳領域が一般人に比べて大きく、一部の競技成績が脳白質の体積の大きさと相関していることがわかっている。

 このように、脳神経科学の発展に伴い、優れた競技成績に直結する脳神経基盤が明らかになっていたが、今回の研究成果がより一層、脳機能と競技のつながりの解明促進に役立つとみられる。

 研究結果を受け、研究グループは、体操競技の成績向上に視空間認識や視覚運動知覚、運動学習などそれぞれの体操競技と関連する脳機能の向上が重要だと認めた上で、「脳のネットワークを評価、測定することで、体操競技選手の各種目への適正や、トレーニング効果の客観的評価に役立てたい」としている。(記事:小村海・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事