ソフトバンクGを見詰める、投資家の冷めた視線

2021年6月26日 15:19

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 23日、ソフトバンクグループ(SBG)の定時株主総会がWeb会議システムにより開催され、孫正義会長兼社長と株主の思惑の違いが浮き彫りになった。

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 投資会社であることを宣言したSBGには、固有の商品もサービスもない。今後のマーケットを制する新興企業を、誰よりも早く見つけて支配権を握らない程度の投資をするのが現在の”事業”だ。アリババのような企業を、何年か毎に発掘したいというのが大まかなイメージだろう。

 SBGを見詰める投資家も、事業会社に対する見方とは変わらざるを得ない。SBGが投資する新興企業は当然のことながら、知名度がないから一般に認知されていない。投資家はSBG(率直に言えば孫氏)のお眼鏡にかなった、前途有望な企業であることを期待して見守る他に術はない。

 根底にあるのは、孫氏の目利きに対する全面的な信頼感だが、100発100中があり得ないことは孫氏が自ら公言しているから、投資家が疑心暗鬼を生じることも止むを得まい。

 SBG関連の投資先は約260社に及び、その多くが利益を計上していないようだが、長期的なスタンスの投資だから辛抱強く見守って欲しいということが孫氏のコメントだ。

 SBGが前期叩き出した純利益は4兆9880億円で、日本企業が計上した利益としては過去最高額となった。SBG本体やソフトバンクビジョンファンド(SVF)等が投資した企業の業績が改善し、評価額が投資額を上回ったから利益になったという理屈だが、評価額を算出しているのがSBGやSVF自身だから、いかに厳格な算出根拠を適切に運用して導き出した結果だと言われても、正直モヤモヤ感は残る。

 上場企業の決算には法的な縛りがあるのに対して、未上場企業の評価額には第三者のチェック機能が効いていないという不安はもっともだ。

 反対に、SBGが投資した先に関するマイナス情報は話題性が高い故か、マスコミが大きく伝えてくれる。大袈裟なのか、適切なのか、突っ込み過ぎか、分析不足なのかを、報道時点で判断することは至難だから、投資家が保守的になり後ろ向きの心理状態に追い込まれるのは当然だ。

 定時株主総会で株主から、自社株買いに関する質問が出た。

 SBGの株価を大きく動かしているのが、業績よりも自社株買いだと見ている株主が少なくない。20年に発表された2兆5000億円に上る自社株買いが実施されている期間中には、上昇基調にあったSBGの株価が、自社株買いの終了が近づくにつれて低下する様は如実にそのことを語っている。

 孫氏自身が「自社株買いばかりが気にされるのはちょっと悲しい」と口にしたのも、株主還元策の「良いとこ取り」が目に余るからだろう。一時は1万円超を記録した上に、業績順調が伝えられながら、自社株買い終了と共に元の木阿弥では、相当堪えて「悲しい」気持ちを抱いても不思議ではない。

 結果、SBGの時価総額は約13兆円となり、孫氏がこだわる約25兆円の純資産価値(保有株式の価値から純有利子負債を差し引く)に近づくことはおろか、従来程度の乖離は解消されないままであった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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