FRB利上げ前倒しでドル高・円安か

2021年6月18日 17:27

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●FRBが利上げ前倒しを表明

 米連邦準備理事会(FRB)は、16日に開催したFOMC(連邦公開市場員会)において、利上げ開始の想定時期に関し、これまで2024年以降としていたものを2023年中に前倒しすることを公表した。2023年末までに2回の利上げがある可能性も示した。

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 これを受けてドルが急伸し、株価も急落した。

 今後も緩和的政策を維持するとしてきたFRBが利上げを前倒しする方針を発表したことは、ドル高要因であり、株にとってはネガティブサプライズとなった。今すぐ利上げするというわけではないが、ドルへの需要は高まり、株から債券への流れにシフトチェンジするのか?

●テーパリングはいつか?

 今回の利上げ前倒しは、テーパリン(量的緩和の縮小)が近いということを投資家に改めて意識させたことにもなる。

 パウエルFRB議長は会見で「今後も引き続きFOMCで検証していく」と述べており、具体的な時期については言及していない。

 各国の中銀首脳が集まる8月下旬のジャクソンホールで、テーパリングについて何らかの発言があることも考えられる。

●株から債券に流れは移行か?

 物価が上昇し、米国10年債利回りは上昇していたが、FOMC前は1.4%台に下落していた。FOMCを受けて再び、1.6%近くまで上昇した。

 異次元緩和の状態の時に常に意識されるのが、2013年のバーナンキショックだが、今回は債券利回りも3月の1.7%までは上昇せず、米国の主要株価指数の下落率も1%を切っており、冷静な受け止め方も多い。

 市場との対話に成功したという報道も見受けられる。

 カナダが一足先にテーパリングを始めたことや、新型コロナウイルスのワクチン効果で経済再開の流れが順調に回復していることなどを考えれば、全てが織り込み済みで“ショック”相場とはなりにくい。

 今回の下落も調整売りとの見方も強く、一時的なものと考えられる。

 ただし、ドルについては今後も利上げが見込めないユーロや円に対して魅力的であり、買われる傾向となるだろう。為替と株の連動が小さくなっており、株価にはあまり影響しないとみられる。

 すぐさま、株から債券への流れに移行するかというと、そうはならないだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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