イベント前だからでない「日本株伸び悩み」/後場の投資戦略

2021年6月8日 12:30

印刷

記事提供元:フィスコ


[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;28987.58;-31.66TOPIX;1962.07;+1.22


[後場の投資戦略]

 エーザイが押し上げ役となって日経平均は前場中ごろまで堅調に推移していたが、その後失速して前引けを迎えた。日足チャートを見ると、前述のとおり75日移動平均線を前に伸び悩む格好。引き続きリクルートHDやJALのように経済活動の再開に期待した物色は見られるが、モメンタム(勢い)色を強めていたレーザーテックは急落。同じく直前まで上場来高値を連日更新してきたトヨタ自も、さすがに節目の1万円に迫り伸び悩んできた。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりとやや低調。

 新興市場ではマザーズ指数が続伸し、2%を超える上昇。東証1部への市場変更を発表したマネーフォワード<3994>や、上場後初の決算発表を行ったビジョナル<4194>などが買われている。レーザーテックやトヨタ自に上昇一服感が出てきたほか、主力大型株が手控えムードであることも、幕間つなぎ的な新興株物色につながっているかもしれない。

 これらの動きは、「10日に発表される米5月消費者物価や、15日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容を見極めたいという思惑」と説明すれば簡単だろう。ただ、筆者は4月の新年度入りからこの方、強気姿勢を維持しつつも「今週は~~があるから」という説明を繰り返す向きが増えた気がしてならない。実際のところ日経平均は2月16日の取引時間中に付けた高値30714.52円で頭打ちとなっており、この事実を冷静に受け止め、分析しなければ先行きも見誤るだろう。

 そのうえで、マクロ系の海外投資家が日本株のエクスポージャー(投資残高)を高めるに至っていないことを再強調したい。日本取引所グループが公表している投資主体別売買動向で、外国人投資家の現物株・株価指数先物の取引状況を見てみよう。便宜上、買い越しをプラス、売り越しをマイナスで表記する。5月第2週(10日~14日、日経平均-1273.35円)は現物株-3950億円、東証株価指数(TOPIX)先物-3769億円、日経平均先物-2597億円。5月第3週(17日~21日、日経平均+233.36円)は現物株-2320億円、TOPIX先物-1855億円、日経平均先物-675億円。5月第4週(24日~28日、日経平均+831.58円)は現物株+3798億円、TOPIX先物-646億円、日経平均先物+1622億円となっている。

 5月第4週には日経平均は29000円台を回復しているが、ここに至っても短期筋中心の日経平均先物はともかく、実需筋中心とみられるTOPIX先物には買い戻しの動きが見られないことがわかる。ちなみに「マクロ系の海外投資家が売り目線」という説明になかなか納得が得られないようだが、これは国内勢及び現物株投資家と先物・為替中心のマクロ系海外投資家で強弱感が真っ向対立しているからだろう。特に国内勢は「これから日本でワクチン普及が本格化する」ことによるバイアスがかかっているように感じられる。

 先週末に発表された米5月雇用統計については既に多く解説がなされているので詳細は割愛するが、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は雇用統計発表後、低下が続いている。前月比で雇用者数の伸びが加速し、インフレにつながると目されていた労働需給のひっ迫は徐々に解消されつつあると受け取れるが、一方で予想を下回ったことで過熱とまでは感じられない。つまり米5月雇用統計はインフレ観測を再燃させる内容ではなかったということだ。重ねて指摘するが、マクロ系海外投資家は既に「インフレ高進・景気加速」に軸足を置いたポートフォリオを変更しつつあり、景気敏感色の強い日本株のエクスポージャーを高めるには至っていないのだろう。(小林大純)《AK》

関連記事