アトピーの痒みを根元から絶つ! 痒み発症する物質を抑制の化合物開発 九大ら

2021年4月20日 08:21

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今回の研究の概要。アトピー性皮膚炎の主要な痒みを引き起こす物質である IL-31の産生を抑制する化合物を開発した。(画像: 九州大学の発表資料より)

今回の研究の概要。アトピー性皮膚炎の主要な痒みを引き起こす物質である IL-31の産生を抑制する化合物を開発した。(画像: 九州大学の発表資料より)[写真拡大]

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 アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質を持っており皮膚のバリアが弱い人が、さらに環境の影響も受けて発症する。強い痒みの症状があることが特徴だ。痒みを我慢することは難しく、掻いてしまうことで症状が悪化し悪循環に陥りやすい。九州大学は15日、アトピー性皮膚炎の痒みを起こす物質の合成を阻害する化合物を、新たに開発したことを発表した。この化合物により「痒みを大元から断つ」治療が可能となることが期待される。

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 今回の研究は、九州大学の福井宣規 主幹教授、宇留野武人 准教授、國村和史 特任助教、 上加世田泰久大学院生らのグループにより行われ、4月2 日に米国科学雑誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載された。

 痒みが起こるメカニズムは、まだ完全には明らかになっていない。原因の1つとして、血液中の免疫細胞の1つである肥満細胞が放出するヒスタミンによる痒みが知られている。虫刺されで生じる痒みはその例の1つだ。虫に刺されによる外来の異物をやっつけようと集まってきた免疫細胞が出すヒスタミンで、痒みが起こる。この痒みを抑える薬として知られているのが抗ヒスタミン剤だ。

 しかしアトピーによる痒みに対しては、抗ヒスタミン剤がほとんど効かないため、ヒスタミン以外の物質がアトピーの痒みを引き起こしていると考えられている。これまでの研究では、その痒みの原因となっているのが、IL-31というヘルパーT細胞が産生する物質であることがわかってきていた。

 これまでアトピーの治療に最も使われてきたのは、「ステロイド塗り薬」である。人間がもともと体内で作っている「糖質コルチコイド」というタンパク質が炎症を抑える作用を持っており、その糖質コルチコイドを元にして合成した薬だ。ステロイドは免疫系を丸ごと抑えることで、炎症を抑える。だが免疫を丸ごと抑えると言うことは、感染症にかかりやすくなるなどの副作用がどうしても起こってしまう。

 ステロイドの他に、現在アトピー性皮膚炎の治療に用いらている薬として、プロトピック軟膏がある。この薬の有効成分である「タクロリムス」は、筑波山の土壌の放線菌から抽出された。この薬は免疫抑制剤の1種で、免疫細胞の1つであるT細胞の活性化を抑え、痒み物質が作られないようにする。

 免疫の働きを活性化する「ヤヌスキナーゼ」を阻害する塗り薬「コレクチム軟膏」もアトピー治療に使われるようになった。これまでの薬で改善しない時に用いられる注射薬デュピクセントは、痒みを引き起こすインターロイキン(IL)の受容体をブロックして、痒みや炎症を抑える薬だ。

 今回研究グループは、アトピーの痒みの主な原因であるIL-31の合成を始める物質EPAS1を阻害する物質に関して、9600個の化合物からスクリーニングし、4個の化合物に絞り込んだ。そのうちの1つIPHBAは、T細胞自体には影響を与えずにIL-31の合成を抑えた。さらにIPHBAは免疫応答に重要なIL-2をはじめとする、他の免疫系には影響を与えなかったという。

 次にマウスにIL-31を産生するヘルパーT細胞を移入して、引っ掻き行動が増加しているマウスにIPHBAを飲ませると、引っ掻き行動が減った。つまり痒みを抑える作用があることが示唆された。

 この化合物IPHBAの人での効果を確認したところ、アトピー患者から採取したT細胞はIL-31を大量に産生していたが、IPHBAを加えるとその産生が抑えられたという。IPHBAはIL-2の産生に影響を与えなかったため、免疫抑制の少ない、アトピーの痒みに選択性の高い薬となることが期待できる。

 研究グループは、さらにIPHBAを元にした化合物を合成し、その効果を検討したところ、IL-31の合成をさらに強く抑える物質の開発に成功した。今後は、アトピー性皮膚炎の痒みを効果的に抑え、さらに免疫抑制の副作用が出にくい医薬品の開発につながることが期待される。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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