アディダス、キノコの菌糸体利用したレザーのような新素材で製品開発

2021年4月17日 08:29

印刷

新素材を用いたスタンスミスマイロ(画像:アディダスジャパンの発表資料より)

新素材を用いたスタンスミスマイロ(画像:アディダスジャパンの発表資料より)[写真拡大]

  • ボルトスレッドの屋内施設(画像:アディダスジャパンの発表資料より)

 アディダスジャパンは15日、キノコ由来の新素材Mylo(マイロ)を採用した「STAN SMITH Mylo(スタンスミスマイロ)」の発売を発表した。マイロは、レザーのようなルックス・質感を持ちながらも、環境負荷が低く再生可能な素材。共同パートナーシップを組む米バイオテクノロジー企業のBolt Threads(ボルトスレッド)が開発した。アディダスは、同社で歴史のあるスタンスミスにマイロを採用することで、サステナブルな取り組みの象徴としたいという。

【こちらもむ】アディダス オリジナルス「スタンスミス」にティンカー・ベルやカーミットなど“緑”キャラデザインの新作

■皮革の代替品となるマイロとは

 マイロは、キノコの根幹である「菌糸体」から作られた素材。ボルトスレッドが最先端農業技術を用いて開発し、2018年頃から製品化に着手している。

 キノコの本体は、菌糸という細いクモ糸のような細胞が連なったもので構成されており、その集合体が菌糸体。ちなみに普段食している「キノコ」は、菌糸体が子孫を残す目的で胞子をまくため一時的に形成した「子実体」で、果実などに近い存在だ。

 適切な環境条件下では、キノコは菌糸を格子状に無限に張り巡らし、複雑な菌糸体を形成する。マイロはそれを活用。屋内施設で温度・湿度などの環境制御を行いながら、菌糸体におがくずと有機物を供給し成長を促進。何十億もの細胞を成長・相互接続させ、3Dネットワーク化させる。シート状に出来上がった菌糸体になめし・染色などを施し、マイロに仕上げる。

 通常の皮革工程で使われる有害物質のクロムやDMFaなどは使わず、環境に配慮した方法で処置。遺伝子操作など人為的な手法も用いていないという。

 ベースとなる菌糸体は、約2週間で作られる。開発途上のため初期投資が嵩み、現在は高コストというが、商業化が進めば生産効率も上げられる見込み。素材の汎用性も革に劣らず、加工や着色などが可能。製品の取扱いも特別対応は不要で、柔らかい湿った布で拭き、清潔な状態で保管するだけという。

 マイロの製品化にあたっては、ボルトスレッドと複数ブランドがコンソーシアム(共同事業体)を形成。アディダスのほか、服飾のステラマッカートニーや、ケリング、ルルレモンが参加している。参加企業はマイロの独占利用権を持ち、各社はボルトスレッドと共同で一般消費者向けのプロダクト開発に取り組んでいる。2021年3月には、ステラマッカートニーがマイロを使った衣服を発表した。

 アディダスのスタンスミスマイロは、2022年春夏コレクションからの発売を予定。ボルトスレッドは、本製品を通じてマイロ商業化の可能性を見出していきたいという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事