NTTドコモの「ahamo」トラブルは、携帯ユーザーの大規模な流動を意味するのか?

2021年4月1日 17:03

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 3月26日にサービスを開始したNTTドコモの新料金プラン「ahamo(アハモ)」が、波乱の船出となった。菅首相の肝いりで進んだ携帯電話の引き下げを象徴するトップブランドが、他社の想定を下回る料金を設定して始めた「ahamo」は、事前申し込みが250万件ほどにも達するということで注目を集めていた。

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 設定料金で本気度が納得できる「ahamo」だが、料金を大幅に引き下げる前提条件も多々設けられていた。手続きがオンラインのみで行われることや、メールが使えなくなることなど、従来のドコモの携帯サービスと比較すると、約80種類のサービスが利用できなくなることだ。

 ドコモの思惑通りに、新規契約者が他社からの乗り換えであった場合には問題ないが、想定以上にドコモユーザーが既存のプランから乗り換えるケースが増加したことで、ドコモの思惑とユーザーの思い込みにミスマッチが生まれた。端的に言うと、ドコモの既往ユーザーは発表された新料金に気を取られ、ドコモ側も変更点を的確に周知させることが出来なかった。

 今回改めて明確になったのは、携帯ユーザーが料金に抱いていた不満の大きさだろう。その意味では政府とユーザーの思惑は見事にリンクしたと言える。

 逆にドコモの思惑は大きく外れた。ドコモが破格の料金を設定した裏には、取引ウエイトの低い若年層ユーザーをオンラインで経費を抑えながら増加させて、ユーザーの年齢構成を修正するという期待があった。

 ところが、自社ユーザーの垂直乗り換えが想定以上に膨らんだ。今まで6千円~1万円位の料金を払ってくれていたユーザーが、一気に半額以下の格安ユーザーに代わってしまう。仮に250万件という事前申し込みの半数が他社からのユーザーで、半数が自社内での乗り換えだと仮定すると、概算で年間600億円程の減収になる。ドコモの収入だった部分が、ユーザーのフトコロに残るという訳だ。(ユーザー125万件×月額減少分4千円×12カ月=600億円)

 格安プランに携帯メールの扱いを認めないという商品性には反発も大きい。総務省の有識者会議は、22年の夏頃までに携帯メールを持ち運べるようにキャリアに要請する検討が進んでいる。何よりも田畑智也料金企画室長が、説明会で「前向きに検討する」と発言し、既に外堀は埋まった状態だ。

 携帯メールの利用がプラン切り替えの障壁と見なされれば、更に風圧は強まる。携帯メールが持ち運べるようになると、格安プランの移行とキャリアの乗り換え指向が、一気に強まると見られている。

 ahamoのサービス開始と同時に、キャリアの本気度が問われることになった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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