独特なビジネスモデルの注文住宅企業:リブワーク東上作戦

2021年2月10日 09:16

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2020年8月には、同社が運営する土地検索ポータルサイト「e土地net」の神奈川県版を開設している。(画像: Lib Workの発表資料より)

2020年8月には、同社が運営する土地検索ポータルサイト「e土地net」の神奈川県版を開設している。(画像: Lib Workの発表資料より)[写真拡大]

 熊本県山鹿市に本社を構える注文住宅メーカーに、Lib Work(リブワーク、東証マザーズ)がある。上場は2015年8月。当時は全く知らない存在だった。

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 知り、「へえ~」と妙に感心し頭の中にインプットされたのは、公開に際して幹事証券を務めた1社から1年余り過ぎてから、「リブワーク自体はあまり強調されたくはないらしいが」と但し書き付きでこんなことを聞かされて以来だ。「今年(16年)春の熊本地震でも、手掛けた住宅が1件も倒壊しなかった」。

 熊本地震は周知の通り、熊本・大分の広範囲にわたり「気象庁が定める最大震度7を記録」し「161人の死者が発生した」大地震である。死者の中には「家屋の倒壊」が原因という人も多い。それだけに、妙に印象に残る企業の1社になった。

 フォローするうちに、住宅メーカーとして「注目に値する」ビジネスモデルを展開していることを知った。

 『リブシステム』。「コストパフォーマンスのいい家を造る」をコンセプトに、「インターネットによる集客」―「設計の内製化」-「建材は本部で一括購入」を展開している。

 無論、展示場は配備している。だが展示場の住宅は、数カ年が過ぎた後にスクラップ&ビルトが常。それでは、コスト負担が伴う。当然、商品価格の重荷ともなる。そこで編み出した?のが「住宅モニター制」。

 注文を受けて立ち上がった家を、2週間だけ「見学会場」として活用するという枠組みだ。その分、住宅価格は200万円引き下げられる。表現が適切かどうかは読者の判断に委ねるが、展示用に使った新車を「新古車」として割安で売却するのと仕様は同じだ。

 前6月期は、コロナ禍の広がり/緊急事態発現発令の影響をモロに受けた。「8.5%の減収、72.9%の営業増益」。国交省では、19年7月~20年6月の新設着工住宅件数(持ち家)を前年同期比8.7%減としている。リブワークが地盤としてきた九州では、11.8%減(3万282戸)としている。

 対して今期は昨年完全子会社化したタクエーホームが加わり、連結を開始。単純比較はできないが中間期計画、「売上44億9800万円、営業利益1億7100万円」でスタート。

 が、1月18日時点で「45億4400万円、2億5400万円」に上方修正。ちなみに通期計画に対する中間期の進捗率は「48%、65%」。リブワークでは「前期に送れた引き渡し分が上乗せしたのが大きな要因」とするが、注目したいのはタクエーホームの存在。業界アナリストは「タクエーは神奈川本社。リブワークが東上作戦に本腰を入れた証し」と指摘する。

 独特のビジネスモデルを武器に着実に九州で実績を積んだ住宅メーカーが、満を持して首都圏に足を踏み込んできた。続けて注目していきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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