【どう見るこの相場】「昔リート、今テレワーク」、地価下落でも割安ハウスビルダー株は勝ち組候補

2020年10月12日 10:18

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 「昔リート、今テレワーク」である。不動産市況とそれを変動させる需給要因を関連付けるキャッチ・フレーズだ。かつてバブル経済が破綻し「土地神話」が崩壊した時に、救世主として登場したのは不動産投資信託(REIT、リート)であった。高値掴みした所有不動産が不良債権化し投げ売りされ底なし沼化した地価に対して、創設されたリートが、所有価値より利用価値を訴求する「所有から利用へ」のパラダイムシフト(規範変遷)を提示して投資利回りにより相場感を生み出し、底値買いの受け皿となって相場反転を牽引した。

 現在はまた、不動産市況はアゲインストである。今年9月29日に国土交通省が発表したように、基準地価は3年ぶりに下落した。コロナ・ショックで訪日外国人観光客が入国制限され、都市部や観光地などでの再開発が頓挫し、またテレワーク推進による在宅勤務の増加で、オフィスビルの賃貸解約が増加し空室率が上昇したことなどが要因となった。この下落が一過性にとどまるかどうかは、もちろんコロナ禍がいつ一巡するかどうかが最大の要因となるが、不動産業界では、先行きの地価動向にやや冷めた見方もあるのは事実である。「2022年問題」が控えているからである。

 「2022年問題」とは、1992年に改正された生産緑地法により都市部に残る農地を都市景観上、緑地として保存するために固定資産税の軽減や相続税の支払い猶予などの税制優遇制度が導入され、その条件として30年の営農が義務つけられたが、その30年目の指定解除時期が、2022年に迫っていることを指す。生産緑地法はその後も改正され、営農継続を条件に30年が過ぎてもさらに10年ごとに延長できる「特定生産緑地」制度が設けられているが、業界では、30年目の2022年に生産緑地が大量に市場放出され地価の下押し圧力になるのではないかと懸念されている。

 このアゲインストな環境をハネ返すと期待されているのが、そのコロナ禍が常態化して「ウイズ・コロナ」による継続する巣ごもり消費とテレワークである。実は今回発表の基準地価でも、物流施設の立地余地のある高速道路沿いの工業地が、巣ごもり消費のネット通販の増加を背景にスポット的に上昇した。またテレワーク推進により、初めて東京都からに人口流失が起こった。これは交通至便とはいえないものの、テレワークスペースのある郊外の低廉なマンションや戸建て住宅を取得する動きが強まったことが背景である。

 テレワークは、今回のコロナ・ショックを逆手に東京一極集中の是正、地方創生のチャンスにもなると期待されている。菅内閣の地方創生・規制緩和・デジタル庁創設政策もこれを後押しし、「2022年問題」による地価下落へ加速要因となる可能性もある。またこの「2022年問題」に関しては、日本への不動産投資を拡大させている外国人プレ-ヤの動向も要注目である。この点に関しては、今年6月に中国の富裕層向けの不動産情報プラットフオーム「神居秒算」を12億2500万円で取得したGA technologies<3491>(東マ)が以来、前週末9日につけた年初来高値1万470円まで2.6倍の大化けした先発組も出ている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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