アウディとクライムワークス、協働で大気中のCO2回収施設をアイスランドに建設

2020年9月17日 07:32

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記事提供元:エコノミックニュース

アウディが、スイスの環境スタートアップ企業クライムワークス社と協働でCO2削減プロジェクトを進めるアイスランドの施設

アウディが、スイスの環境スタートアップ企業クライムワークス社と協働でCO2削減プロジェクトを進めるアイスランドの施設[写真拡大]

 スイスの環境スタートアップ企業であるクライムワークス(Climeworks)社は、大気中のCO2を直接回収して「石」に変えて貯蔵する、世界最大の施設をアイスランドに建設している。

 アウディは、チューリッヒを拠点とするこの企業と提携しプロジェクトを結成して、この未来のテクノロジーを推進する。この施設は、毎年4000トンの二酸化炭素を大気から濾過・取り出して、地下に送り込んで鉱化させる。それにより、アウディはクライムワークス社を通して、大気から1000トンのCO2を除去する。

 地下にCO2を貯蔵するために、ダイレクトエアキャプチャー技術を使う。具体的には、周囲の大気から二酸化炭素を抽出し、CO2を含まない空気を大気に戻す作業を繰り返す。アイスランドのクライムワークス社の新しい施設は、空気から濾過されたCO2を地下に送り込み、そこで自然のプロセスによって鉱化させることができる。そのため、二酸化炭素を大気から永久に除去するという。

 この施設では、まず周囲の空気を吸引し、フィルターが設置された「CO2コレクター」と呼ばれる装置に送り込む。そこでは、特別に開発された吸着剤を使用して、空気中のCO2をフィルターに吸着させる。

 フィルターがCO2で飽和状態になると、近くの地熱プラントからの廃熱を使用して100℃に加熱し、回収したCO2分子を放出させる。次に、アイスランドで最大規模の地熱発電所であるヘトリスヘイジ発電所から施設に流れてくる水を利用して、二酸化炭素を地表から約2000mの地下に送る。CO2分子は玄武岩と自然の鉱化作用によって反応し、数年かけて炭酸塩に変換され、CO2は永久に地下に貯蔵されるという。

 利用した水は、地熱発電所のサイクルに戻される。この施設は、24時間年中無休で稼働し、毎年4000トンのCO2を大気から取り出す。クレジット制度により、その25%がアウディに付与されるというわけだ。

 火山の国アイスランドは、世界でもっとも地熱活動が盛んな地域だ。その高い地熱エネルギーをこの施設に活用することにより、高い費用対効果の方法で、事実上CO2を排出せずに発電することが可能となる。

 さらに、アイスランドの岩盤層は、大量のCO2を貯留するのに理想的な組成を備えている。地下に送り込まれたCO2は自然のプロセスによって永久的に地下に貯蔵されるため、CO2サイクルを閉じることが可能となる。

 アウディは環境スタートアップ企業であるクライムワークス社によるCO2回収技術の開発を2013年からサポート。2年前、両社はスイスのヒンヴィールに、大気からCO2を取り出して炭酸飲料を生産する飲料業界に提供している。

 フォルクスワーゲングループは、2025年までに、バリューチェーン全体で、自動車および小型商用車の環境フットプリントを、2015年と比較して30%削減することを目標としている。それに呼応して一員であるアウディは、2050年までにあらゆる面で完全にCO2ニュートラルな企業になるという目標を掲げている。そのひとつの方策が、このクライムワークス社との作業である。(編集担当:吉田恒)

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