エクソンモービルがNYダウから除外 石油産業の没落は米ドルの黄昏を早めるのか

2020年9月1日 07:50

印刷

(c) 123rf

(c) 123rf[写真拡大]

 8月31日、エクソンモービル株がNYダウ銘柄から除外された。この話題は既知のことではあったが、期日を迎え、あらためてその背景と今後の石油業界の行方を確認しておく必要があるだろう。

 20世紀以降のアメリカ経済をけん引してきたロックフェラー財団の中枢、エクソンモービル社が没落していくことで、オイルダラーと呼ばれた米ドルが黄昏時を迎えるとの懸念を禁じ得ない。

 エクソンモービルの代わりには、セールスフォース・ドット・コムが入る。このS&Pダウジョーンズ・インディシーズの措置は、米株式マーケットの時価総額トップであるアップルが株式分割をすることで、IT系のダウ構成比重の低下を回避する意図があるという。

 エクソンモービルが主要銘柄から外される理由は、この10年間の株価推移を見れば明らかだ。8月28日にWEDGE Infinityに掲載された山本隆三常・葉大学経営学部教授のコラムでは、次のような考察がなされている。

 WTI原油先物が100ドル/バレルを超えた2008年、同社の時価総額は4000億ドルと米株式マーケットの1位であったが、8月28日には172億ドルとピーク時の20分の1以下まで縮小している。なお、エネルギー業界を見ても、S&P500株におけるエネルギー関連株のシェアがこの10年で6分の1以下にまで減少していることから、今回のエクソンモービル社除外が決定されたという。

 なお、エクソンモービルの株価の推移は、WTI原油先物と比べても上昇トレンドが弱い。というよりも6月をピークに下降トレンドに転じている。これはダウ銘柄に残っているシェブロンも同様だが、下落率の高いエクソンモービルが矢面に手に立った形だ。

 そこで冒頭でも述べた通り、石油業界の低迷に連れて米ドル安が進むとの見解だが、これについては対米ドルの為替レートや、貿易や物価から算出する通貨力の総合指標である米ドル実質実効為替レートの推移を見れば明確だろう。

 三井住友DSアセットマネジメントの分析データによると、コロナ禍の影響が出始めた4月からの米ドル・レートは、世界の主要31通貨に対して下落トレンドにある。これは直近での米ドルの弱さを示唆している。次に米ドルの実質実効為替レートだが、こちらは2011年のピークアウト以降大きく下落してきた。

 つまり、WTI原油先物が2008年でピークアウトし、そのあと2011年あたりから原油価格に引きずられる形で米ドルの実質レートが下落。さらにセブンシスターの筆頭としてアメリカ経済をけん引してきたエクソンモービルが、NYダウからの脱落におよぶ企業縮小の局面に陥ったということだ。

 この三つ巴のトレンドのうち、米ドルは金融システムの変革要因からの下落が顕著で、脱米ドル・E2EEによる通貨システムの台頭により、歴史的遺産へと追いやられてしまう可能性もある。なお、今回のコロナ禍によって脱石油・脱米ドルのトレンドに勢いがついたと実感せざるを得ない。

 そこで個人投資家のポートフォリオだが、石油関連株のポジション圧縮と米ドル売りを意識した投資を考慮するべきかもしれない。(記事:TO・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事