謎だった超伝導体の相転移現象 筑波大が解明のための新理論を提唱

2020年8月25日 18:28

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従来からのBCS理論(左)と新理論(右)の概念図(画像:筑波大学の発表資料より)

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 超低温では電気抵抗がゼロになる超伝導体。磁場中で、超伝導状態から通常の金属状態に相転移する際、超伝導電流がジュール熱を発生せず消失する現象について、従来の理論では説明できなかった。筑波大学は22日、この現象を説明する新理論を発表した。

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■磁石を反発する超伝導体

 超伝導体は、電気抵抗がなくエネルギーを失わないことから、電力輸送の方法として期待されている。またもうひとつの特徴として、マイスナー効果が挙げられる。磁場に超伝導体を置くと、磁場を排除しようとする。超伝導体に磁石を近づけると反発するのはそのためだ。

 マイスナー効果が生じていると、超伝導体の表面に電気抵抗のない電流が発生する。だが、超伝導体から通常の金属状態へと相転移すると、ジュール熱を発生せずに消失することが実験で確認されている。

 超伝導現象のメカニズムは、BCS理論によって従来説明されてきた。BCS理論によると、超伝導状態では「クーパー対」と呼ばれる2つの電子が対を組んでいる。この対になった電子が集団で凝縮することで、電気抵抗なしで電流が発生すると説明される。

 だが、超伝導状態から通常の金属状態へと相転移すると、対になった電子が破壊されるためジュール熱が生じることになる。これは実験結果と矛盾するため、BCS理論の課題と考えられてきた。

■近年注目される量子力学の「トポロジー」

 電子など量子の運動を説明する量子力学に、「トポロジー(位相幾何学)」を考慮する分野が近年注目されている。この分野は、量子の運動を記述する「波動関数」のトポロジカルな特徴量(量子数)に着目する。

 筑波大学の研究グループは、「ループ電流」と呼ばれる環状に回り続ける電流が集まることで、電気抵抗のない電流が発生するという新理論を提唱した。この理論では、ループ電流のもつトポロジカルな特徴量がゼロになると、電流は抵抗なしに消失するため、ジュール熱が発生しないと説明する。

 今後は、新理論が提唱するループ電流の確認が課題となる。銅酸化物高温超伝導体でループ電流が存在することは、実験で示唆されている。ループ電流は量子コンピューターにも応用可能で、エラー訂正可能な量子コンピューターの実現が期待されるとしている。

 研究の詳細は、Europhysics Lettersにて21日付でオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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