おうし座の散開星団ヒアデスの寿命はあと3千万年しかない ケンブリッジ大学

2020年7月28日 14:23

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おうし座の星団。

おうし座の星団。[写真拡大]

 7月27日にアメリカのコーネル大学が運営する論文サイトarXiv.orgで、地球に最も近い位置に存在する散開星団であるおうし座のヒアデス星団の寿命が、残りわずかしか残されていないという論文が公開されている。

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 おうし座には、ヒアデスやプレアデスという、学校の教科書にも出てくる2つの有名な散開星団がある。残念ながらおうし座は冬の夜空に輝く星座のため、現在夜空を眺めてもそれらを観望して楽しむことはできない。

 日本人にはプレアデスのほうがなじみが深い。なぜならばこの星団の和名が「すばる」だからである。水平対向エンジンで有名な自動車メーカーのスバルは、エンブレムにこのプレアデス星団の形を採用しているし、谷村新司の「昴」は昭和の名曲として今も日本人の心を揺さぶる素晴らしい歌である。

 今日取り上げるのは、同じおうし座の散開星団でも私たちになじみ深い「すばる」ではなく、もう片方のヒアデス星団のほうである。この星団は、おうし座で最も明るいアルデバランという恒星付近に散らばって見える存在で、和名は「釣鐘星」である。この星団は、地球からの距離がおよそ150光年と極めて近く、地球に最も近い散開星団としても知られている。

 「すばる」が地球から443光年の距離にあるため見かけの星の密集度が高く、星団にふさわしい見栄えがするのに対して、ヒアデス星団のほうは、地球に近すぎるためか見かけ上は少し広い範囲に星がばらけて見えるため、星団という印象がやや薄い。

 論文執筆者の1人であるケンブリッジ大学のセミョン・オー博士によれば、ヒアデス星団が完全に質量を失ってしまうのに残されている時間は、たったの3千万年しかないという。この研究では、欧州宇宙機構(ESA)が打ち上げた探査機ガイアによって測定された、ヒアデス星団を構成している星々の移動速度のデータに基づき、この結論を得ている。

 ヒアデス星団は、誕生時には太陽の1200倍の質量を有していたが、現在の質量は太陽の300倍しかない。比較的短期間に質量を失ってしまった原因は、この星団と銀河系本体による潮汐効果が原因であるとされている。

 わかりやすく言えば、月と地球の潮汐効果で海の潮の満ち引きが起きるように、ヒアデス星団は銀河との潮汐効果であと3千万年ですべてが消えてなくなるのだという。従ってこの星団では、知的生命体が育まれる時間もないだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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