分子の運動を世界最高速で動画撮影に成功 東大など

2020年6月9日 14:08

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カーボンナノチューブの分子挙動を捉えた様子(写真:JSTの発表資料より)

カーボンナノチューブの分子挙動を捉えた様子(写真:JSTの発表資料より)[写真拡大]

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 物質中で運動する原子や分子。その動きは目に見えないほど速い。科学技術振興機構(JST)は4日、1つの分子が往復運動する様子を毎秒1,600枚の世界最速でビデオ撮影に成功したと発表した。

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■捉えるのが困難な原子や分子の運動

 物質の性質や機能を決めるのに重要な役割を果たすのが、原子や分子の運動だ。これらは非常に小さいため、可視光では確認できず、X線やガンマ線等の電磁波が必要になる。また運動の起きる時間は非常に短いことから、通常の動画撮影のようには観測できない。

 分子の撮影を可能にしたのが、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)である。だが動く分子の動画撮影の速度は、毎秒20枚程度が限度だった。これはタンパク質分子が塊として確認できる程度の空間分解能で、原子レベルには及ばなかった。また分子の運動は不規則であるため、挙動を追うためには位置や形を連続的に観測する分析技術が必要となる。

■カーボンナノチューブの挙動を捉えた

 東京大学、米バージニア工科大学、九州大学の研究者らから構成されるグループは、これまで開発を続けてきた「原子分解能電子顕微鏡」で分子の挙動を捉えようとした。波長の短い電子線で物質を透過させ、結んだ像により物質の形状が得られるのが、原子分解能電子顕微鏡の仕組みだ。これにより従来の最高速度の100倍を上回り、分子の像を捉えることに成功した。

 研究グループはカーボンナノチューブ(CNT)で撮影した動画を詳細に解析したところ、分子が0.1秒のスケールでランダムに振動することが判明。分子はまた並進運動と回転運動を行い、振動と連動していることも明らかになった。研究グループによると、CNTの振動による運動エネルギーが回転や並進を発生させているという。

 研究グループによると、本手法により、分子の立体構造の変化や化学反応の仕組みの解明が期待されるという。これにより、材料科学や生命科学などの科学現象の研究進展が期待されるとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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