日本社宅サービスに見る「社宅制」の今昔

2020年5月21日 17:44

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 社宅(制)がある企業。住居費補助制度がある企業。ある人事担当者は「採用面接で、御社は?といまだ学生から聞かれることが少なくない」とした。

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 私の年代では、社宅というと「社有社宅」のイメージが強い。だがいつごろからか、社有社宅は「保有地は社宅でなく利益を生み出す事業展開に活かすべき」「そもそも維持管理するコストがばかにならない」といった理由から減少。今では「借り上げ社宅」(流通市場の賃貸物件を借入、社員に貸し出す)が一般的だという。ただ借り上げ社宅とは言え、物件探し・管理・家賃支払い・トラブル等への対応と決して容易ではない。

 需要の高まりは「事業」化の高まりを促す。

 日本社宅サービス。大企業の(借り上げ)社宅管理事務の代行事業で国内トップシェア。同社の強みは『日本社宅ネット』(独自基準をクリアした全国の不動産会社で構成されるFCチェーン)。約340店舗体制が整っている。

 企業からの依頼を受け、転勤者の希望に合う物件を紹介⇔物件確定⇔契約・家賃の支払い⇔契約更新・解約手続き⇔退去時の清算&入居中のトラブル対応と、一連の業務を代行する。高木章社長は、こう噛み砕いている。

 「大手の企業さんではこれまで、数千から数万の社宅に関わる個別業務を、全国の異なる相手と遣り取りをしていた。担当者の手間・時間コストは相当のものだった。当社では社宅1戸について年間1-2万円の契約料でその業務を代行する。例えば家賃の支払いでも一括して私どもに支払ってもらえれば、当方で個別に振り分けて送金する。社宅業務のアウトソーシングのニーズが高まっていることを実感している」。

 前期末で400社近くから22万件超の社宅代行を受託しているが、「リピート率は、お陰様で95%を超えている」(高木氏)。

 日本社宅サービスでは記した事業を創業来続けているが、2006年に「施設創業管理」事業にダイワード(現クラシテ)を買収して進出した。分譲マンションの管理サービス、そこから派生するリフォーム・修繕工事を展開している。前期末で平均約10万円の契約料で約2万3000戸のマンション管理を受託している。

 ちなみに前6月期は「7.1%の増収、18.4%の営業増益」。詳細にみると売上高では「社宅管理代行:37億8776万円、施設総合管理:41億350万円」。対して利益では「前者:6億9499万円、後者:1億2243万円」。利益率の高い創業来の社宅管理代行業あればこそ「見守りセキュリティサービス、法人向け保険業務代行サービスといった第3・第4の事業確立に対峙することできる」(アナリスト)。基幹事業の重要さをあらためて知らされた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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