新型コロナに関する中国現地メディア報道を活用した中国語学習

2020年2月18日 12:15

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CCTV13チャンネルの対談番組「面対面」の画面。

CCTV13チャンネルの対談番組「面対面」の画面。[写真拡大]

  • CCTV13チャンネルの報道番組「新聞調査」の画面。
  • 中国最大手検索サイト百度の疫情实时大数据报告(感染状況リアルタイムレポート)トップページ

 新型コロナウイルスの影響は長期化が見込まれ、中国経済の先行きも不透明感が増している。中国と何らかの関わりを持つ、または持とうとしている中国語学習者は、現地で苦しむ人々に思いを馳せ、心が痛む毎日であろう。

 また、ビジネスや留学、旅行にもネガティブな影響が出ており、学習者にとっては向かい風の吹く状況ではある。しかしこんな時こそ、中国語を活かして日本では報道されない現地の様子を、直接知り、またそれを学習に活かしていくという前向きな姿勢を持つことが大切だ。

 現地の人々が苦しみながらもコロナウイルスと戦う様子を多面的に知っておくことは、今後中国の人々との付き合いや、信頼関係を築いていく上でも重要である。

 この回では、中国のテレビの報道番組、ニュース、ネットニュース、中国人専門家の発言、新聞記事などから重要な関連報道をピックアップし、アクセスの手順を紹介する。適切な学習方法と組み合わせて中国語学習を進めよう。

 また、関連報道を読み進める上で知っておいた方がよい重要中国語単語トップ10を併記したので、この機会に覚えておこう。

■CCTV(中国中央電視台)の関連番組を見る

 CCTVを視聴する方法については、下記の記事で詳細を述べている。

CCTV(中国中央電視台)放送を活用した、圧倒的に伸びる中国語学習方法

●1. CCTV13チャンネルの「面対面」(対談部分のみ中国語字幕付き)

 この対談番組では、武漢市内の病院等新型コロナウイルス肺炎(※新型冠状病毒肺炎)の医療現場の第一線で奮闘する医師など6名に、インタビューを行っている。番組の概要は下記の通りである。

 (1)武漢金銀潭医院医院長 張定宇氏へのインタビュー(2020年2月2日放送時間約25分)
 張氏は自ら筋ジストロフィーという難病に冒されている。しかし、新型コロナウイルス患者を最も早くから、そして最も多く受け入れ治療を続けている病院の医院長として、第一線で医療現場の指揮を執り続ける。

 張氏同様に医師である妻が新型コロナウイルスに感染しても、治療や看護に当たることもできずに自分の任務に邁進し続ける。

 健常者が感染した場合は3%以下の致死率でも、張氏にとっては致命的であるということも覚悟の上で、日々淡々と目前の為すべきことを行い続ける姿からは、張氏の強さと潔さが感じられ視聴者を勇気づけてくれる。

 (2)武漢市肺科医院重症医学科主任 胡明氏へのインタビュー(2020年2月2日放送時間約15分)
 ICU(※重症监护治疗病房)という最も緊張を強いられる医療現場で奮闘する医師の胡氏は、新型コロナウイルス重症患者の治療の難しさについて率直に語る。

 感染患者数が急激に拡大する中で、経験の浅い医療従事者が次々と現場に送り込まれてくる。こうした現状に胡氏は焦燥と不安を強く感じているという。

 胡氏は語る「実際、搬送されてくる全ての重症患者は被害者であり、一人一人が社会を構成する一員であるわけです。我々は全ての患者の命を守り、健康を回復し社会に復帰することに責任を負うわけです。これが我々ICU治療現場に携わる者の願いであり、為すべきことです。」

 胡氏の言葉は科学的で論理的でありながらも正義感と公平性に溢れ、視聴者の心にまっすぐに伝わってくる。

 (3)武漢市救急センター(※急救中心)120番(日本の119番に相当)配車管理センター配車係 周嬋氏へのインタビュー(2020年2月9日放送時間約22分間)
 市内交通機関が全面的にストップし感染者の搬送は救急車が一手に引き受ける現状だ。救急車の台数が圧倒的に不足する中、配車ルールと人情の狭間に立った時、彼女はリスクを冒して人情を取った。

 上司の指示やマニュアルを重視する日本とは異なり、自分で決めて臨機応変に対応する周氏の姿からは、中国の価値観や道徳観念が伺われ興味深い。

 (4)武漢大学人民医院呼吸科医師 張旃氏へのインタビュー(2020年2月9日放送時間約16分間)
 番組では同僚の医師達が不安を感じ戸惑う中、自ら志願して新型コロナウイルスの治療現場にとどまった張氏の決意と志を紹介している。

 (5)武漢協和医院呼吸内科医師 周琼氏へのインタビュー(2020年2月9日放送時間約16分間)
 医療現場で新型コロナウイルスに感染した医師らを治療した周氏へのインタビュー記録。

 (6)武漢大学中南医院救急センター看護師 郭琴氏へのインタビュー(2020年2月9日放送時間約15分間)
 治療現場で新型コロナウイルスに感染し、治療を受けて治癒したあと再び治療現場に戻った看護師へのインタビュー記録。

●2. CCTV13チャンネルの「新聞調査」(中国語字幕付き、放送時間約50分間)

 同番組では武漢市内で新型コロナウイルスの治療を進める病院、武漢市で新型コロナウイルスと戦う人々や政府の取り組みなどを紹介している。

 (1)火線金銀潭(2020年2月1日放送)
 前述の金銀潭医院において、医師達が治療現場で新型コロナウイルスと懸命に戦う様子を紹介している。

 (2)武漢十七日(2020年2月8日放送)
 2020年1月23日、武漢市疫情防控指揮部1号通告が発布され、市内全てのバス、地下鉄、フェリー、長距離バス、列車は一時営業を停止することが通知された。また、飛行場や駅等も封鎖され武漢市民はウイルスと共に市内に閉じ込められた。

 疫情防控指揮部門は2月3日、再び通告を発布し、肺炎の症状が見られる上発熱している病人(※有肺炎症状的发热病人)、新型コロナウイルス患者に密接に接触した人を区の集中隔離センターに収容し、症状を見守りながら予防措置や治療を行うことを通達した。

 番組では多くの武漢市民へのインタビューを交えながら、非常事態下で武漢市内の感染者、感染者に接触した人、一般市民がどのような生活を送っているか紹介している。

 また感染者数が次々と拡大していく中、自ら志願して感染者が治療を受ける病院で働く清掃員、市民の暮らしを守るために厳格に感染予防措置を取りながら任務を遂行する発電会社の電力供給スタッフの姿を、紹介している。

●3. CCTV1チャンネル「焦点訪談 」(インタビュー部分のみ中国語字幕付き、放送時間約15分間)

 同番組では、1月26日から2月13日まで18回連続で新型コロナウイルスをテーマに番組を放送している。

●4. CCTV4チャンネル「今日関注」(中国語字幕なし、放送時間約25分間)

 同番組では1月27日から2月14日まで17回連続で、新型コロナウイルスをテーマに番組を放送している。

●5. その他のニュース番組

 CCTV2チャンネルの「経済信息聯播」、CCTV2チャンネルの「正点財経」、CCTV2チャンネルの「第一時間」、CCTV4チャンネルの「中国新聞」、CCTV13チャンネルの「国際時訊」といった番組で、ほぼ毎日新型ウイルス関連情報について報道している。

 その他、CCTV番組閲覧ソフトのトップページ推薦欄で紹介されている番組にも留意しよう。また、閲覧ソフトの検索機能を使って関連番組を調べることも可能だ。「新型肺炎」または「新型冠状病毒肺炎」と打ち込むと関連番組が表示される。

■武漢市の新聞記事をインターネットで読む

●1. 長江日報に掲載された記事「武漢百万中小学校今日「雲」上開課」

 長江日報は2月10日、武漢市の小中学校がクラウドを使った「空の上からの授業」をいっせいにスタートさせたという記事を掲載している。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎつつ、子供達の学習の場を確保するための試みだ。

 武漢市内の小中学校教員は、事前に集中トレーニングを受け、児童生徒もアカウントと時間割表が配布されたという。

 市や学校が子供達によりよいクラウド学習の環境を提供するために準備を重ね、奮闘する姿が理解できて興味深い。少し長めの記事ではあるが読んでみよう。

【長江日報】http://cjrb.cjn.cn/html/2020-02/10/content_164374.htm

 また、武漢市の、「楚天都市報」「湖北日報」といった新聞では毎日新型コロナウイルスに関する記事が掲載されている。

【楚天都市报】https://ctdsbepaper.hubeidaily.net/pad/column/202001/23/node_A01.html

【湖北日报】https://epaper.hubeidaily.net/pad/column/202002/11/node_01.html

■専門家の意見

●1. 呼吸器疾患の権威・鐘南山氏が発表した論文《中国2019年新型冠状病毒感染的臨床特徴》

 鐘氏は呼吸器疾患の専門医である。また、2003年のSARS大流行で感染の一層の拡大を防いだ中国の救世主として人々の信頼を集めている。

 SARS流行時、権威や役人が感染状況について楽観的なコメントを述べた時も、鐘氏は事実隠蔽に近いお上の態度に対して毅然とノーを唱えた人だ。現在は中国国家衛生委員会新型肺炎対策専門家委員会のトップを努め、毎日のようにマスコミにコメントを求められている。

 そんな鐘氏が新型コロナウイルスによる肺炎感染者1099人の臨床データをまとめた研究論文を、医学雑誌《medRxiv》に投稿した。

 論文によると個別の症例ではあるが、潜伏期間が24日にも及ぶ感染者が存在したという。また、強い感染力を持ち、短期間で多くの人々にウイルスを拡大する「スーパースプレッダー」(※超级传播者)が発生している可能性についても述べている。
 ネットニュースで論文の概要が紹介されているので読んでみよう。

https://www.msn.cn/zh-cn/news/national/详版钟南山论文最长潜伏期24天-超一半患者早期无发热/ar-BBZQ0oo

■新型コロナウイルス関連報道を活用した中国語学習方法

 字幕付きのテレビ番組を学習素材にした場合「シャドウイング(Shadowing)」、そして「ディクテーション」(Dictation)といった学習方法が有効だ。

 新聞記事やネットニュースなどは黙読、音読そして「サマライゼーション(Summarization)」といった学習方法を試してみよう。

 学習方法については、下記の記事で詳細を述べているので参考にして欲しい。

理想の中国語学習ツール、ニュースサイト「中華網」の漢語学習ページを活用する

 最後にリアルタイムで発信されている感染状況の閲覧方法を紹介する。

●1.中国最大手検索サイト百度の「※疫情实时大数据报告」(感染状況リアルタイムレポート)

 URLは下記の通り。

https://voice.baidu.com/act/newpneumonia/newpneumonia/?from=osari_pc_3
 (PC版)

https://dwz.cn/bEm7gE4t?u=556df0920b11638a
 (モバイル版)

 トップページで全国疫情動態の文字の右側「査看更多」の矢印をタップすると日本など各国の感染状況、中国国内都市ごとの感染者数情報及び地図や折れ線グラフで示された分析結果などが表示される。

●2. 微信(WeChat ウィーチャット)が発信している感染情報

 閲覧方法は下記の通りである。中国及び中国各都市の感染者数、死亡者数、治癒患者数(微信とは、中国の大手IT企業テンセント(中国語:騰訊)が作った無料インスタントメッセンジャーアプリである。)に関する情報が表示されている。

 (1)トップページの左下角「我」次に「支付」のボタンを順にタップする。
 (2)「支付」の画面で右上から二番目の城市服務のボタンをタップすると下記の画面が見られる
 (3)上部のアイコンから各都市の感染者数情報が選択できる。

 同アプリのダウンロードは下記から
https://weixin.qq.com/

 日々の報道から中国では感染拡大を防ぐため徹底した封じ込め作戦が取られている様子が伺える。これは2003年SARSの教訓を活かした対策である。武漢市民は「※众志成城」(成語 みんなが心を合わせ一致団結すればどんな困難も克服できる)を合言葉に「※居家隔离」(自宅で隔離生活を送る、外出を控える)という想像を絶する不便な生活を続けている。

 社会主義国家、管理社会であるからこそ可能な徹底ぶりだが、国家体制や社会制度を超えて脈々と受け継がれている中国人のたくましさ、生命力を見せ付けられる。我々は中国語だけでなく、彼らの強固な精神力も同時に学んでいく必要があるのかもしれない。

■重要語句

 (1)新型冠状病毒肺炎→新型コロナウイルス肺炎
 (2)重症监护治疗病房→ICU
 (3)急救中心→救急センター
 (4)有肺炎症状的发热病人→肺炎の症状が見られる上発熱している病人
 (5)同舟共済→[成語]一致協力して難関を切り抜ける
 (6)刻不容緩→[成語]一刻も猶予できない
 (7)超级传播者→スーパースプレッダー
 (8)疫情实时大数据报告→感染状況リアルタイムリポート
 (9)众志成城→[成語]みんなが心を合わせ一致団結すればどんな困難も克服できる
 (10)居家隔离→自宅で隔離生活を送る、外出を控える(記事:薄井由・記事一覧を見る

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