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21世紀に求められる能力、注目される『STEM教育』の現状

2020年1月27日 13:28

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 文部科学省より戦後最大と言われる教育大改革が行われ、2020年4月には新学習指導要領が小学校で全面実施される。教育大改革に付随するキーワードは様々だが、中でも世界の教育界が大きく注目している施策、STEM教育も含まれている。

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 これは、自発性、創造性、判断力、問題解決力を持った人材を育成する、これからの時代に必要とされる教育手法の1つだ。今回は、日本の現状から見た21世紀に求められる能力と、世界で今注目されているSTEM教育を考えてみたい。

■日本の生産性の低迷

 1人当たりの名目GDPが2000年には世界第2位だった日本だが、2018年には世界第26位にまで落ち込んでいる。更に15歳から64歳までの生産年齢人口を見ると、2012年時点で約8,000万人だったが、40年後の2052年には約5,000万人にまで落ち込むと予想されている。

 この数値が危機的であることは誰の目にも明らかだ。そしてこの状況下では、社会においてもスピーディに生産性を上げられる人材が必要になる。

 なぜなら日本社会全体が直面する危機的状況を念頭に、各企業が孕んだ潜在的な問題を見つけ出し、それを解決して速やかに実行する力が必要だからだ。

 しかしながら日本の学校教育や入試問題の現状は、知識の暗記や再現に偏りがあり、思考し、問題を解決する機会が圧倒的に不足している。こういった背景から、文部科学省は現状を打破し、これからの時代においてグローバルに活躍できる人材の育成を盛り込んだ新学習指導要領を打ち出した。

 そして教育現場は『21世紀に求められる能力の開発・人材育成』に注力することになった。

■STEM(ステム)教育とは

 S(Science)、T(Technology)、E(Engineering)、M(Mathematics)の頭文字で、
 科学、技術、工学、数学に力を入れ、また、今後必要とされる自発性、創造性、判断力、問題解決力を持った子供たちを育てることに注力する教育施策だ。

 まさに21世紀に求められる能力の開発・人材育成メソッドが凝縮されている。アメリカでは、2009年のオバマ大統領の就任時に「科学を本来あるべき場所に戻す」と演説がなされ、以後年間数十億ドルもの予算を投入して、ICT(ネット)設備の導入やカリュキュラムの強化を図っている。

 その熱は世界中に広がり、ヨーロッパや東南アジア、とりわけシンガポールはこのSTEM教育の先進国として知られるようになった。

 OECD(経済協力開発機構)が行ったPISA(学習到達度調査)では、科学的・数学的応用力等で、シンガポールは世界1位の座を得た。国が主体となって早期STEM教育の実施を行い、IT社会とグローバル社会に適応した人材を育成しようとする新しい教育システムは、海外ではもう、何年も前から始まっていたのだ。

■出遅れた日本

 生産性の向上が急務だと分かっていながらも、それを実践する人材の育成カリュキュラムが教育現場に投入されるまでに相当の時間を要した印象がある。

 アクティブラーニングなど他方からのアプローチは公教育の現場で既に取り入れられてきてはいるが、STEMをベースとした教育は、文部科学省で「2020年度小学校でのプログラミング授業の必修化」を発表し、2020年4月にやっと本格導入というところだ。(中学校では「2021年度プログラミング教育の拡充」)

 プログラミング教育は、イコールSTEM教育ではない。STEM教育は前途のように、科学技術を中心に実行力のある人材を育てる教育施策だが、プログラミング教育はその一部、またはSTEM教育を基に日本独自に組み立てられた教育施策だ。

 文部科学省はAI時代を見据え、プログラミング教育を「将来どのような職業に就くとしても極めて重要」とし、思考力・表現力・判断力を当該教育で育む資質・能力と位置付けている。

 思考力にせよ、プログラミング教育にせよ、日本の現状と今回の教育改革の背景を理解せずにフォーカスしても、これまでと変わらぬ試験・入試対策でしかなくなってしまうのではないか――。それでは本末転倒だ。

 子供たちに新しい教育手法ばかりを押し付けるのではなく、子供たちの手本となる大人自身が、自発性、創造性、判断力、問題解決力を持って、日本の未来を考えていく必要があるだろう。(記事:板垣祥代・記事一覧を見る

関連キーワード学習指導要領文部科学省

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