ソニーの「VISION-S」はコンセプトEV 金融技術は付随技術でビジネスモデルではない

2020年1月21日 06:41

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「VISION-S PROTOTYPE」(画像: ソニーの発表資料より)

「VISION-S PROTOTYPE」(画像: ソニーの発表資料より)[写真拡大]

 金融出身の経営者は、どうしても「金のやりくり」をビジネスモデルと勘違いしてしまう。「金貸し商売」ならともかく、「何らかのサービス(商品)」を提供して商売するのならそれが商品であり、「金のやりくり」というのは付随する経営技術だ。これを逆転しては、これからのソニーも間違いを繰り返すこととなる。

【前回は】ソニーはメガサプライヤーを目指す EV「VISION-S」は市販されず

 企業の合従連衡も、それだけで効果が上がるのは銀行のような金融商品商売だけである。現在、行われている自動車業界の再編成は、ビジネスモデル変換に伴い必要となる膨大な開発費の分担を狙ったもので、それで開発競争に勝てると決まったわけではない。肝心なのは、「何を開発するか?」だ。

 その点において、ルノー・日産・三菱の3社連合は方向性が定まらない。ホンダも定まらない。「技術をサプライヤーから買って来ればよい」としていると、消滅してしまう懸念が払しょくできない。ビジネスモデルを見失っているからだ。金融技術はあくまでも「付随技術」であることを自覚することだ。その中で、トヨタの動きは、明確に「次のビジネスモデルを模索」している。

 さて、ソニーが「VISION-S」を市販化する目的で造ったのではないとすると、本当の目的は何か?それはソニー自身が発表しているように、『自動車などモビリティ分野での新たな取り組みを、わかりやすく捉えられるようにする』ことだ。

 つまり、ソニーが持つ製品を自動車でどの様に使うとよいのかを、「VISION-S」によって体感できるようにしているのだ。自動車製造会社に対して、ソニーの部品を採用するよう「提案」しているのだ。例えば、全天球を包み込むように再現できる「360 Reality Audio」を車内音響システムとして装備することを提案している。

 また、一般顧客に対しても「自動車の新しい在り方:例えば、自動車機能の継続的なアップデートを行うOTA(Over The Air)など」を「VISION-S」で見せて、新しい市場の創出を促している。その市場を目指して、自動車メーカーが新規機能を採用することを狙っていると言えるのだろう。これは、長期的な「市場創造」の提案でもあるのだろう。

 ではなぜ、ソニーは直接自動車生産に乗り出さずに、サプライヤーにとどまる判断をしているのであろうか?テスラのようにEV自動車生産に乗り出してもよいのではないだろうか?テスラよりもソニーのほうが、可能性がないとは言えない選択肢に見えるのだが・・・(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: ソニーは利口だ! 電化製品製造業のソニーでも、自動車製造は難しい

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