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近大、冬山の遭難者を捜索する探索システム開発 上空からの発見を容易に
軽量の小型光探索システム。山岳遭難者の発見に有効(写真:近畿大学の発表資料より)[写真拡大]
近畿大学は25日、上空からの山岳遭難者捜索を容易にするシステムを開発したと発表した。QRコードのプリントされた登山用ウェアがサーチライトで照らされると、遠くからでも場所の特定が可能になるという。
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■自動車の反射材等に利用される素材
近畿大学理工学部と農学部の合同研究グループが利用したのが、「再帰性反射素材」と呼ばれる、光が照射してきた方向に反射する素材だ。再帰性反射素材は自動車の反射材や道路標識等に利用されている。
研究グループが丸仁(福井県福井市)とともに共同開発した再帰性反射素材は、ウレタン樹脂製で薄くて柔らかく、登山用ウェアにも装着可能だという。登山用ウェアには再帰性反射素材でQRコードが印刷され、光の照射によって反射光が跳ね返される。
サーチライトにフィルタを装着することで、発色光の選択が可能となり、虹色など鮮やかな色をした反射光が実現される。これにより、認識率の向上が期待されるという。
7月にはレーザーサーチライトを用いた実証実験が、農学部キャンパスで実施され、300メートル先の森林中でも、肉眼やカメラでウェアを身に着けた人の特定が可能だったという。またQRコードの識別により、個人の特定も行えた。
■懸案だったサーチライトの小型化
一方で、50キログラムにも及ぶ大型のサーチライトが捜索に必要という難点があったが、研究グループは、サーチライトとカメラを統合した小型の探索システムの開発に成功。カメラで撮影した映像は、Wi-Fi経由でスマートフォンやタブレットに転送され、QRコードが解析可能される仕組みだ。約5キログラムと軽量にもかかわらず、従来のサーチライトと同等の光の照射が可能だという。
既に実施された実験では、数十センチメートルの雪を透過することが確認された。だが透過率は雪の密度等によって大きく変化することから、実際のスキー場で実験するため、六甲山スノーパークにて2020年1月9日にフィールド実験を実施する予定という。
研究グループは今後、開発したシステムをヘリコプターに搭載した実験を重ね、登山者の探索システムの構築を目指すとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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