小豆に含まれる成分が糖の吸収を抑制する 三重大と井村屋の研究

2019年12月9日 06:47

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糖は代謝酵素により分解されてから吸収される。阻害物質が存在すると糖の吸収は抑えられる。

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 糖尿病の予防や治療のためには、糖の摂取量を抑えること大切である。三重大学と井村屋は、日本人にとって身近な食材である小豆とその煮汁に含まれている糖の吸収を抑える成分のひとつとして、「カテキン-7-O-β-D-グルコピラノシド (C7G)」の働きを調べ、糖の分解を阻害することを明らかにした。

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 また、その働きは加熱によって失われることはなく、むしろ強まっていることがわかった。今後この物質が体の中でどのような働きをしているのかを明らかにし、糖尿病患者の治療や予防に効果を表していくことが期待できる。

 この研究は、三重大学の栗谷健志助教、西尾昌洋准教授および梅川逸人理事副学長が、井村屋との共同研究により実施した。

 食事の中に含まれるデンプンや糖は、大きな分子のままでは吸収することができない。そのため消化液に含まれるアミラーゼやグルコシダーゼなどの糖代謝酵素によって分解され、吸収される。摂り過ぎた糖分は、インスリンの働きにより肝臓内でグリコーゲンとして栄養源となり貯蓄され、血糖値は下がる。しかし糖尿病の患者では、インスリンが十分に働かず、血糖値は高いままになってしまう。

 高い濃度の糖にさらされ続けた血管壁は傷んでいく。細い血管の障害は、末梢神経障害によるしびれの症状や、目の血管障害による糖尿病性網膜症でおこる失明などをひきおこす。また太い血管では動脈硬化を進行させて、心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくする。現在糖尿病患者は300万人以上、予備軍は1000万人以上といわれており、とても身近な病気であり、しかも深刻な病気である。

 小豆は日本人にとっては馴染み深い食材である。お赤飯や、まんじゅうなどの餡として古くから食べられてきた。小豆にはポリフェノールが豊富で、血圧や血糖値、腫瘍、脂質代謝などによい効果を持つことが知られている。三重大学は、小豆食品を長く製造してきたメーカーである井村屋との共同研究によって、煮汁を含む小豆が持つ血糖値上昇を抑制する成分の特定を目指した。

 研究では、生の小豆を一晩水に浸した液体について、含まれている各成分を分離するHPLCという手法を用いて成分を抽出し、さらにNMRという強い磁場を利用して分子構造を解析した。すると小豆に複数存在する糖代謝を阻害する成分のうち、新規成分である「カテキン-7-O-β-D-グルコピラノシド (C7G)」が見つかった。

 このC7Gを含む糖代謝阻害物質は、デンプンを麦芽糖にするα-アミラーゼ、および麦芽等をブドウ糖にするα-グルコシダーゼへの阻害効果を持っていた。さらにC7Gは加熱により同等かより強い糖代謝阻害効果を持つようになることがわかった。

 井村屋では、通常大量に廃棄されてしまう小豆の煮汁を、小豆に含ませて調理した「煮小豆」という商品を販売している。煮汁に含まれていたはずの有効な成分も同時に摂ることができ、さらに廃棄も減らすことが可能。また糖代謝酵素阻害作用により糖の吸収が遅くなるため、糖尿病治療中や糖尿病予防のために摂る食品としても有効である可能性がある。

 研究グループは今後、さらにC7Gの生体内での効果を検討していく方針だ。

 この研究結果は、10月15日のJournal of Food Scienceに掲載され、12月14日に三重大学にて行われる2019年度日本食品科学工学会中部支部大会にて発表される。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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