従業員が「不足」の企業は39.6%、10年連続で増加 日本公庫調査

2019年11月30日 11:38

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 日本政策金融公庫が「小企業の雇用に関する調査結果」を発表し、建設業などを中心に人手不足が続いていることで、事業に支障が出ている企業や、賃金が上昇傾向となっていることが分かった。

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■従業員数「不足」企業は10年連続で増加

 26日、日本政策金融公庫が「小企業の雇用に関する調査結果」を発表した。これは同公庫の取引先である1万企業(小売業、卸売業、飲食店・宿泊業は従業員10人未満、製造業、サービス業、情報通信業、建設業、運輸業は同20人未満)を対象に調査を行い、回答のあった6,836社分を集計・分析したもの。

 現在の従業員数を「不足」と回答した企業の割合は39.6%で、前回(2018年7~9月期)調査と比較して1.9ポイント上昇(不足企業が増加)した。「不足」と答えた企業の割合は2009年の14.5%から10年連続で増加している。

■従業員の過不足DIも上昇続く

 従業員数が「不足」と答えた企業の割合から「過剰」と答えた企業の割合を引いた過不足DI(動向指数)は32.8となり、前回調査から2.4ポイント上昇した。こちらも2009年の-4.6から上昇傾向が続いており、1992年の35.2以来の高い水準となっている。

 従業員過不足DIが業種別で最も高いのは運輸業の62.8、ついで建設業の58.6、情報通信業の52.1で、この3業種で50を超えている。反対に最も低いのは小売業の24.3、ついで製造業と卸売業がともに24.5、サービス業が27.7、飲食店・宿泊業が38.3となっており、数値の差こそあっても全ての業種で「不足」が上回っていることが分かる。

■事業の継承に支障が出る企業も

 人手不足の影響について尋ねたところ最も多かったのは、「需要の増加に対応できない」が44.4%、ついで「人手を確保するために賃金を上げている」が40.6%、「人手が足りず売上が減っている」が31.1%、「売上の減少や人件費の上昇で事業の継続に影響が出ている」が23.1%だった。また「ほとんど影響はない」も13.5%ある。

■人手不足は増員や賃金アップで対応

 人手不足の対応について尋ねたところ最も多かったのは、「増員(パート・アルバイト含む)」で52.2%。以下、「賃金の引き上げ」(32.2%)、「仕事のプロセス(段取り)の効率化」(26.9%)、「従業員の多能化・兼任化」(23.7%)、「仕事(受注)量の絞り込み」(16.0%)、「仕事の機械化・IT化」(9.2%)、「残業の増加」(7.4%)となっている。また「効果的な手段が見当たらない」が8.8%ある。

■従業員数が多いほど賃金も上昇傾向に

 給与水準が1年前と比較して「上昇」と回答した企業の割合は34.8%で、前回調査から3.0ポイント上昇した。「上昇」と答えた企業の割合を従業者の規模別でみると、1~4人の企業では22.3%、5~9人では44.7%、10人以上では61.7%となり、小企業であっても従業員数が多い企業ほど「上昇」と答えた企業の割合が高くなっている。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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