石灰質堆積物により過去の太陽活動を解明する新手法を開発 弘前大など

2019年6月26日 20:21

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中国雲南省の白水台に広がる石灰棚(左)と、そこから採取された石灰質堆積物の年層(右)(画像: 弘前大学の発表資料より)

中国雲南省の白水台に広がる石灰棚(左)と、そこから採取された石灰質堆積物の年層(右)(画像: 弘前大学の発表資料より)[写真拡大]

 弘前大学は6月20日、堀内一穂助教らの研究グループが、石灰質堆積物により過去の太陽活動を測定する方法を発見したと発表した。

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■太陽の長期的な活動周期

 太陽黒点の観測により、太陽の基本的な活動周期は約11年であることが知られている。
 またヘールの観測により、太陽磁場の変動周期が約22年であることが確認されている。

 この他にも数百年~数千年レベルの周期がある。例えば、1600年から1700年の間は「マウンダー極小期」と言われる太陽活動が不活発な時期で、太陽黒点数が極端に少なかった。これが中世の世界的に寒冷な気候の間接的な原因とされている。

■黒点観測以外の太陽活動測定

 1610年頃から、天文学者は黒点を望遠鏡で観測することにより、太陽活動を調べてきた。しかし千年単位の期間となると、黒点の観測データは揃わないため、別の指標が必要になる。

 黒点に代わる太陽活動の物指しとして広く使われているのが、樹木の年輪に含まれる炭素の同位体炭素14を測定する方法である。同位体とは陽子の数が同じで中性子の数が異なる原子のことである。

 炭素の大部分を占めるのは炭素12(陽子6/中性子6)である。炭素14(陽子6/中性子8)は、地球外から飛来した宇宙線が大気中の原子と反応することによって生成される。

 地球にやってくる宇宙線の量は、太陽活動の強さによって左右される。なぜなら太陽の磁場により、地球に降り注ぐ宇宙線が防がれるからである。従って、炭素14の含有率が太陽活動の強さを表すことになる。また南極の氷の層に含まれるベリリウム10も、同様に太陽活動の記録として使用できる。

 しかしこれらの方法には、問題点があった。樹木が取り入れる炭素は大気中の二酸化炭素からであるが、二酸化炭素に含まれる炭素14は、大気循環によって拡散されるため太陽活動の影響が平均化されてしまう。

 一方で南極の氷については、氷の層が自らの圧力によって圧縮されるため、数万年より古くなると、1年という精度では年代が読み取れなくなる。

■今回の研究

 今回の研究では、トラバーチン堆積物と呼ばれる石灰質の堆積物を使用した。トラバーチン堆積物は最深部でも1年間当たり1センチメートルという厚い層を形成しているため、数万年以上の古い時代の太陽活動も1年単位で読み取れる可能性がある。

 研究では、トラバーチン堆積物に含まれるベリリウム10濃度の分析を試みた。その結果得られたベリリウム10濃度は、宇宙放射線の強度を高い精度で反映していることが分かった。

■今後の期待

 数十万年前までの太陽活動を1年単位の精度で再現する方法が確立されたことにより、太陽活動の周期やその変動の原因についてさらに理解が進んでいくことが期待される。

 本研究成果は、科学雑誌「Quaternary Science Reviews」に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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