九電、2030年へ向け低炭素社会化の推進と経常利益1500億円目指す

2019年6月16日 19:37

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 九州電力は6月7日、事業活動を通じて九州の持続的発展に貢献し、地域社会と共に将来にわたって成長していくために、長期的な視点に立って経営を推進していく「九電グループ経営ビジョン2030」を策定したと発表した。

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 低炭素で持続可能な社会の実現に向けて、原子力発電の稼働率向上、再生エネルギーの出力向上、発電コストの高い火力発電比率の引き下げ、海外進出の強化、新規事業の強化などにより2030年度には前期の3倍弱となる経常利益1,500億円を目指す。

 九電は、1951年の電気事業再編に伴い、日本発送電と九州配電を再編成し、九州地区において発電から配電までを一貫して行う会社として設立された。

 水力発電143カ所で358万kw、火力発電8カ所で994万kw、原子力発電2カ所で470万kwなど自社分1,882万kw、他社分1,069万kwと合計2,951万kwの発電能力を持ち、主に九州7県へ電力供給を行っている九電の動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は2兆171億円(前期比3%増)、経常利益は211億円減の525億円(同29%減)だった。

 経常利益減少の主な要因としては、再生可能エネルギーの他社購入電力料が増加、川内原子力発電所の定期検査や送配電設備の保全工事などで修繕費や諸経費が増加したことと、エネルギー関連事業の海外投資に係る評価損計上などによるものである。

 今期売上高は2兆850億円(同3%増)、経常利益は最新鋭火力の松浦発電所2号機の運転開始による燃料費削減と前期に海外投資に係る評価損を計上した反動などにより、800億円(同52%増)を見込んでいる。

■中期経営計画(2019年~2023年)による推進戦略

 「九電グループ経営ビジョン2030」において、2030年に低炭素社会と経常利益1,500億円(対前期比186%増)の実現に向けて、中期計画で次の戦略を推進する。

 1.エネルギーサービス事業の進化

 ・環境に優しいエネルギーの安定供給: 再生可能エネルギー、原子力の利用による非火石電源比率向上と、火力発電の高効率化により九州の低炭素化を推進。

 ・蓄電技術や電力制御などのエネルギーに関する技術開発: 分散型電源の普及と電力取引形態の多様化を見据え、蓄電技術の活用と電力制御の最適化推進。

 ・九州域外での電源開発、燃料事業の強化と海外事業の拡大: 競争力強化を図るため、九州域外、海外でも発電事業を拡大し、燃料トレーディングなど新たな収益獲得へ取り組む。

 ・送配電事業の取り組み強化: 発送電の法的分離を控えてAIを活用した設備保全の高度化、効率化によるコスト低減。

 2.継続可能なコミュニティの共創

 ・ICTサービス: 光ブロードバンド事業とモバイルサービス事業を推進し、データセンター事業へ進出。
 
 ・インフラサービス: 福岡空港、熊本空港の運営事業に参画し、九州の活性化に貢献。

 ・都市開発とまちづくり: 福岡市青果市場跡地活用事業、天神エリアエネルギー事業へ参入し、他社と連携して不動産事業を推進。

 ・新たな市場の創出: 宮崎県上椎葉ダムなどを活用した電力インフラツーリズム推進。

 2020年4月からの発送電の分離による自由競争を控えて、地元を固めながら九州域外、海外へ視野を広げて競争力の強化を目指す九電の動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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