穏やかに人生の最終期を迎えられる「ホスピス住宅」

2019年6月5日 16:24

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 人間誰しも「苦しまずして眠るように死にたい」と思う。だが現実はそう容易ではない。末期がんや難病で「痛みや苦しみと闘いながら最後を迎える」ケースも現に少なくない。

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 その意味で今年3月28日、興味深い企業が上場した。「ホスピス住宅」を手掛ける日本ホスピスホールディングス(日本ホスピスHD)である。社長の高橋正氏により2017年に設立された。ホスピス住宅事業と在宅訪問看護・介護事業を営む事業会社を傘下に持つ。

 ホスピスとは末期がんや難病で治癒の可能性のない患者に対する、最終期ケア。自宅療養では「痛み・苦しみ・死への恐怖」などの対応は、家族が背負う負担を含め決して容易ではない。訪問看護・介護だけでは限界があった。そこで踏み出したのが「ホスピス住宅」。

 厚労省が定める「在宅」には、高齢者専用賃貸住宅や老人ホームも含まれることを活かした施策だった。最終期を迎えた医療ニーズの高い患者に特化した利用者が安心して暮らせ、かつ訪問看護(介護)サービスも効率的に行える住宅である。

 本稿作成時点で13のホスピス住宅(居住室数386)が稼働している。日本ホスピスHDでは「19年末には計14棟414室を計画。20年以降は開設ペースをあげ、展開エリアも現在の関東・中部に加え関西にも早期出店を予定している」とする。

 医療機関にも「ホスピス:緩和ケア病棟」を有するところがある。が、医療制度改革で、症状が落ちついたら退院させる方向が進んだ。「看取り」の役割を果たし切っていない現実がある。言葉を選ばずに言えば「短期入院報酬の引き上げ⇔長期入院/病院経営負担増」による後退である。

 日本ホスピスHDはそうした流れを「緩和ケア病棟からホスピス住宅への入居紹介が増えている。医療機関のホスピスと当方のホスピス住宅は、医療連携関係にあると考えている」とする。

 ホスピス住宅には訪問看護・訪問介護事業所が併設されている。看護師・介護士の24時間365日常勤体制が執られている。「28室モデル(標準)では常勤換算で看護師・介護士がそれぞれ12~13人、リハビリスタッフ1~2人、それに調理・事務スタッフ3~4人が配置されている」。

 同社を知るアナリストは、「看護師全体の0.1%程度の専門看護師(日本看護協会の所定の試験に合格した卓抜した看護実践能力を有する看護師)、1%程度の認定看護師(専門的スキルの高い看護師。同協会の試験を経て認められる)が多い。またそうした質の高い看護師がいかに揃っているかは、新規施設開設時の応募倍率が3~5倍という点にも顕著。言い換えればプロ看護師にふさわしい処遇が執られていると言える」と指摘する。概の入居負担金は約20万円。30余年間の勤労で得られる厚生年金+αで活用できる。

 国は「病院・施設から自宅」に介護・看護の場を、という施策を執っている。だが在宅看護・介護には諸々の課題も多い。こうした「ホスピス住宅」にもフォローの財源体制を整えるべきではないか。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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