5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (7)

2019年5月30日 19:47

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 このコラムでは、私が博報堂時代から今も使い続けている有効なプレゼン術を紹介しています。業種や職種を問わず、どなたでも実践できて成果が出やすい情報です。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (6)

■(9)A4用紙に「その場書き」して、握る!

 これは、一通りプレゼンが終わり、質疑応答タイムでの対処法です。クライアントからの疑問や要求を「いったん社に!」と持ち帰らずに、その場でしっかりと打ち返す技術です。

 まずプレゼン終了後、持参した【30枚ぐらいのA4白紙】を机上に置いて、態勢を整えます。【太ペン(黒)】もお忘れなく。そして、クライアントから質疑や要望が出されたら、瞬時にその文脈を解釈し、逆質問で得た情報から【コピーやアイデアをその場書き】します。そして、

 「今おっしゃった意図は、このようなことでしょうか?」

 と「決定権者」に向けて提案と確認を同時にするのです。答えをできるだけ量産し、その中で勝算のある案だけをテンポよく提示して、「共通の目標」を探し当てていきます。

 つまり方向付けを、決定権者とその場で握ってしまうのです。繰り返しになりますが、プレゼンとは一方的な提案だけで終わらせることではありません。クライアントと「共通の目標」を確認し、いっしょに社会と市場を動かすための共闘関係を築く場なのです。またこの場で決定権者と握ることは、プレゼン後に頻出する「後出しジャンケン」の防衛策にもなりえます。

 この「その場書き」という迎撃スタイルは、じつは、ご自身の考えた戦略へ誘導させることが眼目にあります。コピーライティングや企画力を瞬時に振るって、その場で得意先承認を得るという高度なテクニック。これはもう、場数を踏んで体得するしかありません。

 質疑をきっかけにクライアントと議論を深め、次回提案に活かすための有益な情報を引き出す。そしてそこから答えを導き出した時、もはや主導権を握ったも同然です。そうなれば、次回から決定権者は、もう、あなたに注目するよりほかありません。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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