5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (6)

2019年5月24日 16:16

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 「ねえ、これってさ、●●●じゃ、ダメなのかな?」

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (5)

 プレゼンにおいて、提案物にクライアントから疑問をぶつけられた時、難色を示された時、あなたは、どう対応していますか?

 「あ…… それにつきましては、いったん持ち帰らせていただきますっ!」と自ら思考停止して、逃げていませんか。今日は、プレゼンの場でのクライアント対応について話していきます。

■(8)否定されても反論し続ける。何度でも出直す。絶対に通す。

 まず、クライアントからの疑問・質問は絶対に持ち帰らずに、その場で解決して下さい。クライアントは、あなたの一挙一動を見ています。ビジネスパーソンに求められるのは、その瞬間瞬間での意思決定です。クライアントに迷いを見せないこと。提案したプランに勝算があり、本気で案を通したければ、勢いではなく、ロジックで真摯に反論し続けることも、時には必要です。

 ずいぶん昔の話になります。

 某クライアントのプレゼンが終わった2日後の夕方。クライアントのかなりのお偉いさんから、私たちは急遽招集させられました。呼び出しです。M田CD、私、当時はモジャモジャ頭じゃなかったA山G義アートディレクターの3人。

 暗く静かな会議室で待っていると、スッとそのお偉いさんが入室。と同時に説教スタート。提案したC案が相当気に食わなかったみたいで…。それは、激烈を極めました。

 しかしM田CDは一切ひるまず、長時間、反論し続けていました。私も何か言わなきゃ…と思っていましたが、クチを挟む間もなく、M田CDの2時間ぶっ通し反論で試合終了。そして、帰社してすぐに、

 「お前、なんで、あそこで反論しないんだよ。お前の企画だろうが。」

 と、今度はM田CDから静かに教育を受けました。ターニングポイントはココですね。大企業のクライアントに対し、あんな風に大反論していいんだ、と。M田CDが言いたかったのは、「反論できるだけの勝算を持って提案しているのか、お前は!」ということです(たぶん)。

 それからは、クライアントに拒否られようが、営業に止められようが、通す!という気概で、やり過ぎなぐらいに何事も取り組むようになりました。8時の朝駆けも当たり前。クライアントの困惑をよそに承認されるまで出向くのも当たり前。その代わり、成果もしっかり出しました。今思うと、営業もよくセッティングしてくれたし、クライアントも辛抱強く付き合って下さいました。若い頃の話です。

 と書くと、あるあるネタで終わってしまうのが常ですが、このスタンスは、今でも変わりません。

 最後に。激烈に怒られた企画というのは、当時、最先端のミュージックプレーヤーのキービジュアル提案だったんですが、、、3匹の醜いブタがハワイかなんかでダンシングしてるビジュアルなんですよね……。

 山手線ジャックして、TVCMを全国投下するって言ってるのに、ブタ……。最新ミュージックプレーヤーなのに、ブタ……。音楽好きがターゲットなのに、ブタ……。でも、ダジャレコピーがちゃんとブランド名にオチてる、ブタ……。それはそれは、マジでリスペクトするアートディレクターの神カンプなのでした(絶賛保管中)。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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