大阪市立大と北大、モズがはやにえを作る理由を初めて解明

2019年5月14日 21:21

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モズのオス。(画像:大阪市立大学発表資料より)

モズのオス。(画像:大阪市立大学発表資料より)[写真拡大]

  • モズが作ったバッタのはやにえ。(画像:大阪市立大学発表資料より)

 百舌(モズ)のはやにえはよく知られた習性である。しかし、何故モズがはやにえを作るのか、はやにえにはどのような機能があるのかについては長い間謎に包まれていた。それを今回、大阪市立大学大学院理学研究科の西田有佑特任講師、北海道大学大学院理学研究院の高木昌興教授らの共同研究グループが明らかにしたという。

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 結論を先に言えば、モズのはやにえは、モズのオスがメスの獲得において重要な歌の質を高めるために、栄養食として行うものであるという。

 はやにえは「速贄」とも書く。モズの仲間には広くみられる習性で、狩りの餌を木の枝や棘などに刺し、保存しておくというものである。一般的な説としては、冬のための食糧確保が目的なのではないかと考えられてきたが、はやにえを他の動物が食べてしまったり、モズ自身がはやにえの所に戻ってこなかったりすることも多く、その理由は謎であった。

 今回の研究でも、まず「冬の保存食説」に対する検討が行われた。はやにえが冬のための食糧貯蔵であるなら、気温の低くなった時期にモズは頻繁にはやにえを消費すると予測される。しかし実地で野生のモズの調査を行ったところ、モズのオスは非繁殖期にはやにえを生産し、そのほとんどは繁殖期が始まる前に食べ尽くされることが分かった。1月にはやにえ消費のピークが来るのであるが、1月よりもっと寒いはずの2月になると、モズははやにえを消費しなくなるのである。

 そしてはやにえの消費される1月は、モズの繁殖が始まる直前の時期なのだ。そしてオスの歌を実地で録音したものと、はやにえの消費量の関係を調べた結果として、はやにえの消費量の多いオスほど歌唱の速度が速いことが分かった。また、はやにえを取り除いた「除去群」、はやにえの3倍量の餌を与えた「給仕群」を人工的に作って調査を行ったところ、給仕群のオスはより早い時期にメスを獲得できた。

 結果として、モズのはやにえはメスを獲得するために重要な歌の質を高めるために行われている事実が示唆されるわけである。

 研究の詳細は、国際学術誌『Animal Behaviour』のオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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