ストーンヘンジを建造したのは地中海世界からの移住者か DNAにより解明

2019年4月19日 11:24

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ストーンヘンジ。

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●謎が多いストーンヘンジ、建造者はエーゲ海世界から?

 ロンドンの自然史博物館のセリーナ・ブレース博士率いる研究チームが、科学誌『ネイチャー エコロジー&エボリューション』にストーンヘンジに関する研究を発表した。新石器時代の巨石文化とされるストーンヘンジは、現在も数多くの謎に包まれている。天文学や宗教学の分野からストーンヘンジに関する研究論文は、これまでも数多く記されてきた。

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 今回の研究では、ストーンヘンジを建設した人々がテーマになった。研究によると、ストーンヘンジを建設したのはエーゲ海のアナトリアから移住した人々であるという。つまり新石器時代にイングランド南部に居住していたのは、現地民ではなく現在のトルコからやって来た人々である可能性が高いという。

 彼らによって、イギリスに農耕文化や、葬儀の儀式、陶芸の技術がもたらされたと考えられる。

●新石器時代、中石器時代の遺体のDNAを比較

 研究では、新石器時代(紀元前6000~4500年)の農業社会に属した47遺体と、中石器時代(紀元前1万1600年~6000年)の狩猟社会に属した6遺体のDNAが比較分析された。

 ストーンヘンジが建設された時期については諸説があり、一般的には紀元前3100年から1600年の間とされている。分析の結果、その時代にイギリスに住んでいた人口の大多数が、アナトリアの農民たちと類似のDNAを持っていることが判明した。

 この大移動には2つのグループがあり、1つはドナウ川をさかのぼった人々、もう1つはイベリア半島を通過した人々である。研究によると、ストーンヘンジを建造したのは、後者のグループに属す人々と推測されている。

●先住民とは交配した形跡なし

 また、理由はわかっていないものの、アナトリアの人々がイギリスに定住するのには1000年を要している。当時、イギリスの原住民は非常に数が少なく、狩猟採集民族であった。当時のイギリスに、農耕文化をもたらしたのがアナトリアの人々であったと判明した今回の研究の意義は大きい。

 研究の執筆者の1人であるトム・ブース博士によると、アナトリアの人々が移住したのちに先住民と交配した痕跡は認められないという。しかしブース博士はさらに、イギリスの先住民の数が非常に少なかったために交配しても遺伝的継承がなされなかった可能性も否定できないとしている。

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