小惑星ベンヌの回転、太陽が原因で加速 米探査機使い解明 岡山大

2019年3月26日 17:07

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オシリス・レックスによって撮影された小惑星ベンヌ(c)NASA/Goddard/University of Arizona

オシリス・レックスによって撮影された小惑星ベンヌ(c)NASA/Goddard/University of Arizona[写真拡大]

 岡山大は19日、小惑星ベンヌの回転速度が、太陽が原因で加速していることが判明したと発表した。米宇宙探査機オシリス・レックス(OSIRIS-Rex)からの観測により、ベンヌには衛星が存在せず、塵の量が少ないことも判明した。

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■米探査機が目標に定める小惑星ベンヌ
 2016年9月に米ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられたOSIRIS-Rexは、試料採取のために打ち上げられた惑星探査機だ。2018年に地球から220万キロメートル彼方の小惑星ベンヌに到着した。

 小惑星ベンヌは直径490メートルのそろばん型の天体で、46億年前の誕生当時の姿を残す岩石があるとされている。さらにベンヌには生命の材料となる有機物が豊富に存在するとみられ、探査によって太陽系や生命の起源についての研究が大きく前進することが期待される。

■太陽の熱が小惑星の運動を変化させる
 岡山大助教であるMatthew Izawa氏らから構成されるグループは、OSIRIS-Rexからの観測結果と望遠鏡による観測結果とを組み合わせて、ベンヌを調査した。その結果、ベンヌの回転速度が加速していることが判明した。

 ベンヌの回転速度は、表面を取り巻く塵の量から算出されたという。2018年9月にベンヌ表面の塵の発生量を観測し、1秒当たりの平均発生量を見積もった。これと過去の計測結果を組み合わせた結果、太陽放射の散乱と熱放射の放出で自転速度と自転軸の傾斜が変化する効果により、ベンヌの回転速度が変化していることが解明された。

■ベンヌは衛星をもたないことも判明
 OSIRIS-Rexが実施した高感度の観測データを研究グループは解析したが、衛星は発見されなかった。ただしOSIRIS-Rexはベンヌを引き続き調査中で、その後の航行画像により小惑星近傍に微粒子の存在が示唆されている。そのため今後のさらなる観測が必要だとしている。

 ベンヌから標本を採取したOSIRIS-Rexは、2021年に探査が終了したのち、2023年に地球に帰還する予定だ。

 研究の詳細は、英学術誌Nature Communicationsにて20日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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