魚の血を吸う蚊の生態を解明、東大などの共同研究

2019年3月12日 08:34

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カニアナヤブカの成虫。(画像:東京大学発表資料より)

カニアナヤブカの成虫。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 カニアナヤブカは魚から吸血する蚊の一種である。このカニアナヤブカが野外において具体的にどの魚の血を吸っているか、という調査の難しい問題が、分子生物学的な手法によって解き明かされた。

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 研究は、岐阜大学教育学部の三宅崇准教授、同学部卒業生相原夏樹さん、琉球大学熱帯生物圏研究センターの山平寿智教授、同大学院生小林大純さん、沖縄科学技術大学院大学の前田健研究員、同小柳亮技術員、東京大学大気海洋研究所の新里宙也准教授らの共同研究によるものである。

 カニアナヤブカは亜熱帯のマングローブ林などに生息する。オカガニ類やオキナワアナジャコの穴に棲み付き、夜間に穴から出て魚の血を吸いに行くことがこれまでに解明されていた。おそらくは汽水域への適応進出に伴って魚の血を吸うようになったと考えられ、実験環境下ではトビハゼという陸上で過ごす時間の長い魚の血を吸ったため、トビハゼ類の血を主な餌とすると推定されていた。

 琉球列島の奄美大島、沖縄島、石垣島、西表島で採取したカニアナヤブカの未消化の胃の中の血からDNAを抽出し、塩基配列の情報から吸血源を割り出したところ、4目8科15種の魚を同定することができた。

 予想に反し、トビハゼ類の血を吸っていたカニアナヤブカは全体の3%に過ぎず、西表島ではジャノメハゼ、沖縄島と奄美大島ではゴマホタテウミヘビなどの、空気呼吸魚・両生魚と呼ばれる種類の魚の血を主に吸っているということが明らかになった。

 ただし、1個体のみではあるがクラカケモンゲラという水中で生活するはずの魚の血を吸っていた例も見つかり、どこでどのように吸血行動を取っているのか、解明することが今後の課題であるという。

 なお研究の詳細は、英国の国際誌「Scientific Reports」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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