村田製作所の「高品質」スピリットは、依然健在(上)

2019年2月24日 17:59

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 2月22日の日本経済新聞電子版が「村田製、逆風を跳ね返した高品質路線」という見出しで記事を配信している。村田製作所は昨年10月31日の段階で今3月期の計画を上方修正している。

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 電子部品企業が総じて軟調な推移を強いられる中での増額修正は目を引いた。「売上高を1兆5750億円から1兆6200億円」「営業利益を2400億円から2750億円」「純利益を1800億円から2100億円」にそれぞれ引き上げでおり、電子版はその背景を記した内容だった。

 村田製作所の主力商品は積層セラミックコンデンサ。高級スマホ向け、先進運転支援システム・自動運転システムなど自動車向けが2本柱。4-12月期決算の席上、同社の竹村善人取締役は「上方修正の段階で、高級スマホの台数見込みを慎重にみていた」としたことを記事は伝えている。その上で「自動車向け搭載数を村田製は2023年3月期には18年3月期の3倍の需要を見込んでいる」と市場動向に対する的確な判断を指摘し、「自動車関連で苦戦する電子部品メーカーもある。村田製が異なるのは高い品質の製品に特化していること」と結んでいる。

 記事を読んで、あることを思い返し「村田スピリットは依然健在」を痛感した。時間は1979年2月に遡る。ある若手部長の提案でライン部長職者以上の「経営会議」が行われた。円相場の完全自由化(73年2月)後、円高傾向が続いており、78年後半には1ドル・200円を割り込む場面も出現していた。若手部長の提案というのは「輸出を円建てにシフトすべきではないだろうか」というものだった。

 当時の村田製作所は、海外展開に積極的だった。65年の米国村田を皮切りに、シンガポール村田(72年)・香港村田(73年)・ヨーロッパ村田(78年)といった具合に販社網を設立していた。売上に占める輸出の2割を超え25%に迫っていく状況だった。

 対しては、円高の進行。そうした背景が件の提案になった。

 経営会議の意見は割れた。参加者から発せられる意見の7割が「円建て輸出/ノー」だった。午後1時に始まった会議は、4時半を過ぎたあたりに「賛否」の意見が出尽くした。その時、一人の男が意を決したように初めて口を開いた。当時の米国村田の社長、茶之木太氏である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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